米Gartnerは米国時間6月30日に,ホットスポット市場に関する今後の展望について調査した結果を発表した。それによると,公共の場所で無線LANに接続できるホットスポットは,2001年の1200カ所強から,2003年には7万1000カ所以上へと急増する。しかしホットスポットの利用者が今後ますます増えるため,ホットスポットはまだ不足状態にあるという。

 全世界におけるホットスポットの利用者数は,2002年の250万人から,2003年には930万人に達する見通しだ。2003年における利用者数を地域別にみると,北米が470万人,アジア太平洋地域が270万人,欧州が170万人を占めるようになる。

 「2002年におけるホットスポット利用者は,たまたま機会があったため,試しに1~2度,それも無料で利用したというユーザーが全体の91%を占めている。今後予測されている利用者数に対応するには,より多くのホットスポットが必要となる」(Gartner社Telecommunications Group担当者副社長のIan Keene氏)

 2002年にホットスポットの設置場所として人気が高かったのは,喫茶店,ガソリンスタンド,レストランといった小売り店舗である。2005年までは,ホットスポットの70%以上が小売店舗に設置される見通しだ。

 Gartner社副社長のKen Dulaney氏は,「ホットスポットそのものは,たいした収入を生むことはできない。しかし,顧客サービスの一環として小売店舗に設置する場合,本業の売上高増加に結びつくため,ネットワークの導入費を相殺できる」 と説明した。また同氏によると,社内のニーズに対応するために無線LANを導入し,後ほどその一部を仮想LANとして切り離し,ホットスポットとして提供するケースもあるという。「ホットスポットによって,無線LAN導入にかかったコストを補填することができる」(同氏)

■世界におけるホットスポットの設置場所

設置場所               2001年    2002年   2003年   2004年   2005年

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空港                     85       152       292       378       423

ホテル                  569     2,274    11,687    22,021    23,663

小売店舗                474    11,109    50,287    82,149    85,567

企業の来客エリア         84       624     1,762     3,708     5,413

駅/港                    -        88       623     2,143     3,887

公共の場所                2       266     5,637    20,561    30,659

その他                    -       240       790     1,526     2,156

合計                   1,214    14,752    71,079   132,486  151,768

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出典:Gartner社(2003年6月)

 Gartner社によると,2004年には仕事で利用されるノート・パソコンの50%以上が無線LAN対応になる。その結果,外出先で電子メールにアクセスしたり,ファイルのダウンロードを行う従業員が増える見通しだ。そのようなユーザーを引きつけるために,小売店舗の多くがホットスポットの設置を検討している。同社は,2003年~2004年にかけて,小売店舗におけるホットスポットの導入が進み,2005年にその数がピークに達すると予測する。

 Keene氏は,小売店舗がホットスポットを導入しても,十分な数のホットスポット利用者を引きつけられなかったり,ホットスポットだけを長時間利用して,製品やサービスを購入しないユーザーが多いなど,失敗する可能性があると指摘する。「しかし,ホットスポット・サービス・プロバイダ間で柔軟な請求書発行体制が整えば,早期にクリティカル・マスを獲得することも可能だろう」(同氏)

 またネットワーク・サービス・プロバイダ(NSP)は,ホットスポットの普及によって厳しい競争にさらされる。ホットスポットに必要な機器やコストが限られているほか,NSPは無線LANの電波や設置場所に関して,何の権限も持たないからだ。

 「NSPは,広帯域接続環境の提供によって収入を得るのではなく,ホットスポットの利用者から直接収入を得られるビジネス・モデルを確立する必要がある。たとえば,既存のサービスにホットスポット・サービスを追加することなどを検討した方がよいだろう」(同氏)

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