米E Inkが,2002年6月にマサチューセッツ州ボストンで開催されたシンポジウム「Society for Information Display(SID)Symposium, Seminar and Exhibition」で,カラー電子ペーパー・ディスプレイのプロトタイプを展示した。E Ink社と,同社の戦略的パートナである凸版印刷およびオランダRoyal Philips Electronicsが,マサチューセッツ州ケンブリッジ,カリフォルニア州サニーベール,東京で6月1日に明らかにしたもの。

 このディスプレイは,E Ink社の電子インク技術,凸版印刷のカラー・フィルタ・アレー,Philips社のアクティブ・マトリクス技術を組み合わせ,3社が共同開発したもの。

 4096色の表示が可能な反射型ディスプレイで,電源を切っても画面に表示が残り,消費電力が非常に少ないという。画面の大きさは5.0インチ(対角長)で,画素数は320×234ピクセル(解像度は80インチ/ピクセル)。PDA,モバイル通信機器,電子ブック・リーダーなど,モバイル環境での利用を想定している。

 E Ink社によると,「一般的に液晶/有機液晶ディスプレイは,直射日光が当たるようなところでは見えにくく,また角度によっては画像が消えてしまう問題がある」。それに対し,「カラー電子インクを使ったディスプレイは,紙のように薄く,どのような照明のもとでも,どのような角度からでも,コントラストや明るさを損なわずはっきりと読み取れる」(E Ink社)という。

 さらに同社は,「同電子ペーパー・ディプレイは消費電力を大幅に削減できるので,信頼性を向上すると同時に,必要な電池の量を減らし,電池による駆動時間を長くできる」と説明する。

 3社は,このカラー電子ペーパー・ディスプレイを2004年に商品化する計画である。なお凸版印刷とPhilips社の計画では,E Ink社の電子インク技術を利用した白黒ディスプレイを2003年に発売する。同白黒ディスプレイは,当初4ビットのグレイ・スケール表示に対応し,ハンドヘルド機器向けという。

 E Ink社と凸版印刷は2002年2月に,両社の戦略的パートナシップ関係を拡大し,日本におけるE Ink社製品の製造/販売までもその協力体制の対象に含めている。これにともない凸版印刷は,E Ink社に対し2500万ドルの追加投資を行っている。

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