オランダのRoyal Philips Electronicsの米国子会社Philips Componentsと電子インク(electronic ink)技術を手掛ける米E Inkが米国時間6月5日に,ハンドヘルド機器向け“電子ペーパー”ディスプレイのプロトタイプを公開した。画面サイズは5インチ。電子ペーパー

 サンノゼで開幕したディスプレイの展示会「Society for Information Display(SID) Symposium, Seminar and Exhibition」で発表したもの。

 両社は2001年2月末にE Ink社の電子インク技術をベースにしたハンドヘルド機器向けディスプレイの共同開発に関し包括提携関係に入っている。提携の一環として,Philips社はE Ink社に出資も行った

 両社が発表したハンドヘルド機器向けディスプレイのプロトタイプは,Philips社のアクティブ・マトリクス技術とE Ink社の電子インク技術を組み合わせたもの。当初のモジュールは白黒/グレイスケール表示のみで,テキストおよび画像が表示できる。解像度は80画素/インチ。

 「従来のハンドヘルド機向けディスプレイ技術と比べ,読みやすさが著しく向上している」(両社)という。

 両社は携帯情報端末(PDA),携帯電話,電子ブック端末,電子メール端末などの製品に向けた高解像度の電子インク・ディスプレイに関し,2003年の実用化を目指して協力体制を敷いている。

 E Ink社によれば,同社が手掛ける電子インク技術は,読みやすさ,低消費電力,薄さの3点で優れているという。反射型カラーLCDと比べ,6倍以上の明るさを確保,コントラストは新聞よりも高い。暗がりでも直射日光の当たるところでも,またどの角度からでもはっきりと読み取れるという。

 また,ディスプレイの電源を切っても画面に表示が残り,通常の使い方なら明るいバックライトが不要なので,携帯機器の電池動作時間を延ばせる。ディスプレイは通常のLCDに比べて,30~50%薄型・軽量にできるという。

 E Ink 社は、マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置く。米Lucent Technologies社のほか、米Motorolaやベンチャー・キャピタル(VC)など数社が電子ペーパーの開発を目的として1997年に設立した未公開企業である。 従来のSiトランジスタを用いた電子インクの表示ディスプレイ「Immedia」などを開発している。2000年11月にLucent社と共同で電子ペーパーのプロトタイプを初披露しており,2001年4月には米IBM Researchとの提携により,表示速度を10倍高速化した新版のプロトタイプを公開している。

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