紙のように薄くて軽い電子ペーパー電子インク(electronic ink)技術を手がける米E Inkが米国時間7月28日に,小売店での店頭販促ディスプレイ(POP:Point-of-Purchase)に向けた“電子ペーパー”の提供を始めたことを明らかにした。製品名は「Ink-In Motion」。

 電子ペーパーは,紙のように薄型軽量で,折り曲げなど柔軟性に富む表示装置。E Ink社が自社の電子インク技術をベースとし,米Lucent Technologyの協力を得て開発した。Ink-In Motionは,E Ink社が電子ペーパーをPOP向けに実用化したもの。独自フォントや静止画像のほか,動画の表示にも対応する。

 E Ink社は2年以上にわたり小売店の現場で調査活動を行い,店主やブランド・マーケティング・スタッフなどから寄せられた要望をもとに開発した。薄型軽量のプラスチック・シートで,用途に合わせて最大タテ22.9cm×ヨコ55.9cmまでの複数サイズを用意する。店頭に既設のPOP表示台にもそのまま取り付けが可能。単三電池2本で最大1年間動きつづける。

 「POPに動画を加えることで広告効果が著しく高まると考えていた人は多い。しかし,デザインの柔軟性やスペースが限られていること,消費電力などの点でもコストがかなりかかることなどから断念せざるを得なかった。Ink-In Motionを使えばこうした問題点を解決し,容易に動画広告を設置できる」(E Ink社)。なお,米Veronis Suhlerの調査報告によれば,米国のPOPメディア市場は170億ドル強の規模であるという。

 E Ink社によれば,同社が手掛ける電子インク技術は,読みやすさ,低消費電力,薄さの3点で優れているという。反射型カラーLCDと比べ,6倍以上の明るさを確保,コントラストは新聞よりも高い。暗がりでも直射日光の当たるところでも,またどの角度からでもはっきりと読み取れるという。E Ink社は電子ブックや電子新聞などに応用可能として,大手ベンダー数社と提携し開発を進めている。

 E Ink社は,Ink-In Motionの導入およびマーケティングに関し,米国企業6社と独占的な契約を結んだことも明らかにした。提携の6社は,POP表示装置ベンダーの米Consumer Promotions International,米Frank Mayer and Associates,POPマーケティングの米Gage Marketing Group,米New Dimensions Research,マーケティングの米PRISM Group,米Rand Display。対象は米国市場のみ。

 各社とも小売店やマーケティング企業などに対しInk-In Motionの導入を促す。店頭にInk-In Motionを使ったPOPが登場するのは2002年第1四半期となる見込み。

 また海外市場に関しては,アジア市場における導入・拡販に関し,提携企業の凸版印刷と協力体制を敷く。両社は2002年前半に試験的な導入実験を行う計画である。

 なお,E Ink社と凸版印刷は2001年5月に,カラー表示が可能な電子ディスプレイの開発に関し,包括提携している。これには,凸版印刷によるE Ink社への出資も含まれる。出資金額は500万ドル。凸版印刷はE Ink社の電子ペーパー向けカラー・フィルタ技術に関し,独占的な製造/販売権を持つ。対象地域は世界市場で,契約期間は複数年。

 E Ink社は,マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置く。米Lucent Technologyと米Motorolaがベンチャー・キャピタル数社とともに電子ペーパーの開発を目的として1997年に設立した未公開企業である。2001年に入り,オランダのRoyal Philips Electronicsと凸版印刷の2社ともそれぞれ提携関係に入った。

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