電子インク(electronic ink)技術を手掛ける米E Inkが米国時間4月10日に,アクティブ・マトリクス方式の電子インク・ディスプレイを公開した。高解像度のイラストやテキスト表示などのデモンストレーションを行った。

米E Inkのディスプレイ

 「アクティブ・マトリクス方式の電子インク・ディスプレイは当社が世界で初」(E Ink社)。

 今回披露したのは,旧版と比べ表示速度を10倍高速化した新版のプロトタイプ。米IBMのIBM Researchと提携し,ノート・パソコン用ディスプレイに用いる電子部品などの提供を受けた。プロトタイプ・ディスプレイのサイズは12.1インチである。インクの色に青色を加え,画面のコントラストも向上させた。既存のディスプレイ(LCD,LED,CRTなど)読みやすさ,携帯性,エルゴノミクス(作業姿勢などの人間工学)の3点に優れているという。具体的には以下の通り。

・読みやすさ
 反射型カラーLCDと比べ,3~6倍の明るさを確保,読みやすくした。暗がりでも直射日光の当たるところでも読める。コントラストは新聞よりも高い。紙のように,どの角度からでもはっきりと読み取れるという。

・携帯性
 ディスプレイの電源を切っても,画面に表示を残す。携帯機器の電池寿命を延ばせる。通常の使い方なら明るいバックライトが不要なので,消費電力は標準的なノート・パソコンと比べ1/1000以下という。

・エルゴノミクス
 電子インクのディスプレイは紙に書いたインクのように表示するので,ユーザーの眼精疲労を軽減できる。ディスプレイは通常のLCDに比べて,30%ほど薄型軽量。

 「紙のように軽くて薄いディスプレイ“電子ペーパー”(electronic paper)への実用化に向け,また一歩前進できる」(E Ink社社長兼CEOのJim Iuliano氏)。

 E Ink社は携帯電話や携帯情報端末(PDA),ディスプレイ装備の読み出し専用端末などでの利用を想定している。E Ink社はIBM社と協力し,2001年6月にカリフォルニア州サンノゼで開催される「Society for Information Display Conference」でディスプレイのプロトタイプを出展する。

 なおE Ink社は2000年11月に,米Lucent Technologiesと「電子ペーパー」のプロトタイプを共同開発したことを発表している米E InkのディスプレイE Ink社が開発した電子インク技術と,Lucent社が開発したプラスチックに回路を形成する(プラスチック・トランジスタと呼ぶ)技術を組み合わせた。電子インクを用い,プラスチック回路を介して印刷,表示する。両社は共同でプロトタイプのデモンストレーションを行った。

 E Ink社は,マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置く。Lucent社のほか,米Motorolaやベンチャー・キャピタル(VC)など数社が電子ペーパーの開発を目的として1997年に設立した未公開企業である。従来のSiトランジスタを用いた電子インクの表示ディスプレイ「Immedia」などを開発している。このディスプレイでは,画面の更新などで瞬時に表示を変えることができるという。

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