米IBMが“世界最速”のシリコン・トランジスタを開発した。同社が米国時間6月25日に明らかにしたもの。210GHzの動作を確認した。

 この技術を用いれば,2年以内に100GHz動作の通信用LSIが可能になるという。「競合他社よりも5倍速い製品を4年繰り上げて製造することができる」(IBM社)。

IBMの高速SiGeトランジスタ技術
米IBMが開発した最速のSiGeトランジスタ(右側がSiGe層を薄くした今回の技術)

 ちなみに米Intelが6月11日に同社が開発したゲート長0.02μmのMOSトランジスタ技術を発表しており,「2007年には10億トランジスタを集積し,20GHzで動作するマイクロプロセサが可能になる」としていた。

 またIBM社はその数日前の6月8日に,シリコンに手を加えて半導体の処理速度を最大35%高める技術「Strained Silicon」を発表している。

 IBM社が今回開発したトランジスタは,シリコン・ゲルマニウム(SiGe)製造技術を用いている。210GHzで消費電流は1mA。既存のトランジスタと比べて80%性能が高く,消費電力を50%削減できるという。

 一般的なトランジスタは電子が水平に流れるが,IBM社の「HBT(heterojunction bipolar transistor)」と呼ぶ技術では電子を垂直方向に流す。この垂直方向の厚さを薄くすることで処理速度を高めるている(図参照)。

 今回発表した技術は既存の生産設備を利用できることが特徴。携帯電話機やその他の無線通信機器での用途を視野に入れる。

 IBM社は現在多数の通信関連企業と,マサチューセッツ州Waltham,ニューヨーク州East Fishkill,カリフォルニア州Encinitas,フランスのLaGaudeにある設計センタで,様々な製品でのSiGe利用に関して共同作業を進めている。

 なおIBM社のWWWサイトでトタンジスタの動きを示すアニメーションをみることができる。

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