「朝早く、毎日のように余震で起こされているんだ」――。宮城県仙台市を訪れた際、現地に住む友人からこんな愚痴を聞いた。毎日というほどではないが、確かに東北や北関東では、夜中や朝にしょっちゅう震度1~2の地震が発生している。筆者自身も滞在中、早朝の余震で目が覚めてしまったことがあった。

 東北~北関東の人たちにとって2011年3月11日の本震の記憶はまだ鮮明だ。その後4月7日にも大きな余震があった。しかも沿岸部に行けば5月現在でも、前面がひしゃげた自動車や、他の車に乗り上げた自動車など惨劇の痕跡が放置されたままになっている。そんななかで夜中に揺らされれば、目が覚めてしまうのは、防衛本能の働きとして当然のことなのかもしれない。

 しかし睡眠不足を放置しておくのは決して良いことではない。産業医大ソリューションズ代表取締役社長・医師の亀田高志氏は、「睡眠時間が減りすぎると突然死のリスクが多少高まったり、メンタル面での不調が起こりやすくなったりするとされている」という。

 そして、不眠の主因が余震であったとしても、対策としてできることがその他の面であるはずだと指摘する。生活習慣や就寝環境を改善し、かゆみや痛みなど肉体面で眠りを妨げる持病があれば治療をするなどだ。

 ITproでもエンジニアの自己管理などの視点から不眠対策について多くの提言がある。例を挙げよう。

・寝室に仕事関連の物を置かないなど、就寝環境を整える。
・自分なりにリラックスできる行動を発見し、それを就寝前に実践する
・入眠をアルコールに頼らない
・つらくても朝にはきちんと起き、睡眠不足は短い昼寝で補う

といったものだ。

 プロジェクトの締め切りなどに追われがちなエンジニアにとっては、そもそも就寝時間を十分に確保するよう努力することも大切である。例えば、

・前日や朝に、当日するべき仕事を書き出し優先順位をつける
・多すぎる仕事を抱えたときは早めに上司に報告・相談する

 といった昼間のタイムマネジメントをしっかり行うことも、必要になる。亀田氏によれば、1カ月の残業を45時間未満にすれば、健康障害のリスクが低くなると厚生労働省は指摘しているという。

 このほか睡眠関連のトピックとして見逃せないのが、サマータイム導入に踏み切る企業が徐々に出てきたことだ。もともとは節電対策として浮上したものだが「早寝早起きの観点からも望ましい動き」(亀田氏)と評価する意見がある。

 だがその一方で、「実質労働時間の短縮を心がけないと労働時間の長時間化につながる可能性もある」(国士舘大学経済学部非常勤講師の海上知明氏)と指摘する意見もあることは、心しておくべきだろう。

 過去の不眠関連の記事を以下にまとめておくので参考にしてほしい。

識者の提言

余震で眠れないあなたへ

寝つけない「入眠障害」その対策方法を知る

寝不足のプレゼン ドリンク剤も効かず

サマータイムの前に必要なこと

記者の眼・記者のつぶやき

あなたのココロは健康ですか?

あなたの「体内時計」は,今何時ですか?

いつも「時間が足りない」と嘆くあなたに捧げる処方箋

あなたも私も疲れている?! 最大の疲労回復法は「ひたすら寝る」

連載・眠れないエンジニアのための「生体リズム学」

第1回 “眠れナイト”を過ごしていませんか?

第2回 睡眠不足と肥満を招くファスト・フードの夜食

第3回 ITエンジニアの職業病 ──テクノストレス・テクノ依存症

第4回 ITエンジニアの能力は午前11時にピークを迎える

第5回 要領よく働いて睡眠時間を確保しよう

第6回 夜眠れない原因は昼間の過ごし方にあり

第7回 眠いとき我慢しない「プチ昼寝」は大正解

第8回 週末の寝だめは病気のもと

第9回 できるITエンジニアは朝早く起きる

連載・IT現場のストレス解消法

第1回 あなたのストレス・レベルは大丈夫?

第2回 現場の方法「R」:仕事を忘れてくつろぎ楽しむ

第3回 現場の方法「P」:前向き思考で不安や憂うつを断つ

第4回 ストレスの理論:なぜ休息や前向き思考が有効なのか

第5回 医学的アプローチ:簡単・即効の3大リラックス法