最後に,オフィスでいつでも簡単にできる医学的なリラックス法を三つ紹介する。それは「呼吸法」「筋弛緩法」「自律訓練法」だ。いずれも,ITエンジニアの心理カウンセリングを数多く手掛ける臨床心理士の菊地章彦さん(日本産業精神保健学会 常任理事,ヒューマンリエゾン 代表)が勧める効果の大きい方法である。

 三つの方法のなかでも簡単なのは,呼吸法と筋弛緩法である。呼吸法のやり方は図6に詳しく示したが,息を思いっきり吸うのではなく,ゆっくり長く吐き切ることがポイントである。

 筋弛緩法については,対象とする筋肉によってやり方が異なる。ここでは,最も容易な肩の筋肉の筋弛緩法を示した(図7)。

 自律訓練法は手順が多く時間がかかるので,短時間でできるようにした簡易版を示した(図8)。精神を集中させる必要があるので,薄暗く静かな場所のほうが効果がある。空いている会議室を見つけて挑戦してみてほしい。

図6●呼吸法のやり方、図7●筋弛緩法のやり方、図8●簡易版の自律訓練法のやり方
図6●呼吸法のやり方
(1)立つかイスに座って,背筋を伸ばす
(2)へその下10センチの「丹田」に意識を集中させ,両手をその近くに置く
(3)ふぅ~っと,できる限りゆっくり長く息を吐き,最後まで吐き切る。そのうえで自然に息を吸い,またゆっくり長く吐き切る。これを3~10分間繰り返す
図7●筋弛緩法のやり方
(1)息を吸って,肩を持ち上げるようにグッと力を込める。そのまま息を止めて,10秒数える
(2)筋肉の力を緩めて脱力し,ゆっくりと息を吐く。この動作を3回繰り返す
図8●簡易版の自律訓練法のやり方
(1)なるべく薄暗く静かな場所に移動する。イスに腰掛け背筋を伸ばし,首の力を抜いてうつむき,静かに目を閉じる
(2)手のひらをこすり合わせたうえで,ももの上に置き,意識を集中させる
(3)「気持ちが落ち着いている。手のひらが温かい,温かい」と心の中でつぶやきながら,太ももの温かさを手のひらで感じとる。その状態を,3分間続ける
(4)最後に,目を開けて,手を握ったり開いたりして,大きく伸びをする