Windows分野における2007年の一番のトピックは何と言っても,1月30日にVistaの一般コンシューマ向け出荷が始まったことである。
それに先立つ2007年1月15日にはマイクロソフトが「Windows Vista」「2007 Office system」の製品発表会を開催。NECパーソナルプロダクツ,エプソンダイレクト,東芝,日本ヒューレット・パッカード,日立製作所,富士通,レノボ・ジャパンなど17社が,Vista搭載パソコン247機種を一斉に発表した。
各社は発表会でリビング向けの新コンセプトPCなどを紹介し,「パソコンをメールやインターネットのためだけに使うのではなく,それらを超えたさまざまな体験ができるようになる」(Windows本部長のジェイ・ジェイミソン氏)ことを訴求した。
XPのサポートや販売を延長
Windowsですでに恒例となっている発売日午前0時のカウントダウン・イベントはそれなりに盛り上がりを見せた(左下の写真)。しかし,発売イベント前の2007年1月25日にマイクロソフトが,日本市場の要望にこたえる形で「2009年4月で終了するとしていたWindows XP Homeのサポートを2014年4月まで延長」することを発表。
さらに,2007年9月27日には,「Vista発売の1年後にあたる2008年1月31日をもってWindows XP正規OEMライセンスの提供を終了する」としていた当初の予定を5カ月延長し,2008年6月30日まで提供を継続すると発表した。マイクロソフトはVistaの販売が好調であることを強調しているが,その一方で,XPに対するニーズが引き続き高いことを伺わせた。
互換性や新機能に戸惑い
Vistaに対するユーザーの戸惑いや不安は,右ページのランキングからも読み取れる。一つは既存アプリケーションの互換性の問題である。
ITproでは,Vistaでセキュリティが強化されることによって動かなくなる恐れのあるアプリケーションについての解説記事(関連記事1,関連記事2),日本語Windows Vistaが新文字セット(「JIS X 0213:2004」)を採用したことによる文書の互換性やサーバー・アプリケーションへの影響を解説した記事などがよく読まれた。
また,Windows Vistaで新たに加わった省電力モード「スリープ・モード」に戸惑った人も少なくなかったようだ。スリープ・モードは,XPが備えているスタンバイと休止状態を組み合わせたモードだが,単なる省電力モードの1つというわけではない。XPでは「電源オフ=シャットダウン」だったが,Windows Vistaでは「電源オフ=スリープ・モード」になる。さらに,スリープ・モードの設定内容が,デスクトップPCとノートPCでは異なるなど,ややわかりにくくなっている。
文書フォーマットのオープン化が進む
ITproのWindows分野のランキング1位のニュース「総務省がNHK報道を否定」は,政府調達の基本指針にある「オープンな仕様に基づく製品を優先する」という言葉の“解釈”を巡ってのもの。NHKが,マイクロソフトのWordやExcelの文書規格がISOやJISの規格になっていないため,オープンな仕様に基づいていない,と判断して,WordやExcelが購入できなくなる旨を報道したことに対して,総務省が否定する形で反論した。
実際マイクロソフトは,オフィス・アプリケーション向けファイル・フォーマット仕様「Office Open XML」ですでに,国際的な標準化組織であるEcma Internationalの承認を受けている。Open XMLはISO(国際標準化機構)標準としての採用が見送られたが,マイクロソフトは2008年初頭には承認を獲得できると確信すると語る。こうした一連の流れは,文書フォーマットによるユーザー囲い込みの終えんを象徴している。
IE7の配布が問題に
ランキング6位のニュースは,マイクロソフトが2007年10月5日に,日本のユーザーに対してWindowsの自動更新でInternet Explorer(IE)7を誤って配布してしまったことを明らかにしたもの。この自動更新は,主に欧米向けユーザーのためのものだったが,マイクロソフトの設定ミスで日本の一部ユーザーにもインストールされてしまったという。
IE7については,2008年第2四半期にリリース予定のWindows XP SP3から外されることが明らかになった。IE6とIE7ではActive Xコントロールの非互換性などが問題視されており,Active Xをよく使っているアジア圏に配慮した格好だ。
ただし,暮れも押し迫った2007年12月17日,マイクロソフトは,IE7日本語版を2008年2月13日から自動更新機能を使って配布することを明らかにした。自動更新機能を有効にしているパソコンには,IE7が自動的にインストールされるようになる。