総務省は7月2日,「国が今後,マイクロソフトのWordやExcelを購入できなくなる」というNHKが7月1日に行った報道は誤りであるとのコメントを発表した。7月1日から適用された「情報システムに係わる政府調達の基本指針」では「国際規格・日本工業規格等のオープンな標準に基づく要求要件の記載を優先する」としているが,総務省ではこの指針により「ISOやJISに該当していない製品等がただちに排除されるという理解は誤り」としている。

 NHKは「情報システムに係わる政府調達の基本指針」にある,「原則として,独自の機能,独自のデータフォーマット及び独自の方式を使用せず,国際規格・日本工業規格等のオープンな標準に基づく要求要件の記載を優先する」という原則と,マイクロソフトのWordやExcelの文書規格がISOやJISの規格になっていないことを根拠に「国は今後,業務に支障がある場合などを除き原則としてWordやExcelを購入できない」と報道したものと思われる。それに対して総務省は「オープンな標準は,ISOやJISだけではなく,その他の公的規格や業界団体による規格も含まれる概念であるため,ISOやJISに該当していない製品等がただちに排除されるという理解は誤り」であるとコメントした。

 基本方針における「オープンな標準」とは,原則として,(1)開かれた参画プロセスの下で合意され,具体的仕様が実装可能なレベルで公開されていること,(2)誰もが採用可能であること,(3)技術標準が実現された製品が市場に複数あること, のすべてを満たしている技術標準をいう。マイクロソフトが「Office 2007」で新たに採用した文書フォーマット「Open XML」は,標準化団体のEcma Internationalによって「ECMA-376」として標準化されており,総務省の言う「その他の公的規格」に該当すると考えられる。

 また総務省では「調達仕様書の要求要件として,オープンな標準を優先して記載する」ことを定めただけで,提案された製品を調達するか否かは「その他の要求要件とも照らし合わせて総合的に評価して決定する」ものであり,「政府調達の基本指針は,オープンな標準に基づく製品を対象にすることにより,選択の幅を広げ,より効率的な情報システムの構築を目指すものであり,特定の製品の調達を排除したり,あるいは特定の製品に限定して調達する趣旨では全くない」と述べている。