米国半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)は,米国が今後もIT分野でリーダーシップを発揮するために,物理研究への取り組みを強化するよう政府関係機関に提言した。SIAが米国時間3月16日に明らかにしたもの。SIAは「来るべきナノ・スケール半導体素子への移行は,IT分野のリーダーシップが早い者勝ちになることを意味する」と警告している。

 ワシントンD.C.で開いた記者会見の場で,米半導体メーカーのトップやエコノミストなどが,前進を継続させて半導体技術リーダーになることの重要性を強調した。「専門家は,現在の半導体技術が2020年ごろ物理的,技術的,経済的な限界に達するとみている」(SIA)

 SIA会長のSteve Appleton氏は,「米国政府が研究開発に振り分ける予算のGDPに占める割合は,過去20年間でほぼ半減した」と指摘する。「リーダーシップ獲得に向けて,(予算額を)1980年代なかごろの水準に戻す必要がある」(同氏)

 「半導体,コンピュータ,通信機器,ソフトウエアというITが生み出した4つの業界が再生の4分の1を担っているのに,米国のGDPのわずか3%にしか相当しない。IT派生業界の与える影響は,その比較的小さな市場規模に比べ巨大だ」(ハーバード大学Samuel W. Morris University教授のDale Jorgenson氏)

 SIAは,全米科学財団(NSF:National Science Foundation),米国商務省の国立標準技術研究所(NIST:The National Institute of Standards and Technology),米国防総省(DoD:Department of Defense)に対して,物理研究予算の増額などを求めた。要求の概要は以下の通り。

・今後10年間,毎年7%ずつNSFの研究予算を増やし,現在の2倍に引き上げる

・大学におけるマイクロエレクトロニクス研究を支援する半導体業界の取り組みFocus Center Research Programと連携し,2000万ドルの予算を割り当てる

・NISTによるナノ製造(ナノマニュファクチャリング)とナノ計測分野の研究予算を2000万ドル増やす

・米教育改革法(No Child Left Behind Act of 2001)の数学/科学に対する取り組みMath and Science Partnership Programに対し,予算を増やす

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