米国のIT業界団体であるITAA(Information Technology Association of America)は,オフショア・アウトソーシングが米国の経済とIT産業に与える影響について調査した結果を,米国時間3月30日に発表した。それによると,ソフトウエア開発やITサービスのアウトソーシングは,米国の雇用拡大や実質賃金の上昇といった経済効果をもたらしているという。

 調査はITAAが,米Global Insightに依頼して実施したもの。米国の企業1000社を対象にアンケートを行ったほか,政府機関や調査会社のデータを分析した。

 ITアウトソーシングは,2003年に9万人の雇用を創出しており,2008年にはその数が31万7000人に達する見通しである。また今後5年間に,ITアウトソーシングを行う場合と行わない場合とでは,創出される雇用の数に差があることが分かった。行う場合は,新たに51万6000人の雇用が生まれるが,行わない場合は,49万人にとどまる。

 オフショア・アウトソーシングは,低いインフレ率を維持しながら生産性を向上できるため,米国労働者の実質賃金も向上する。ITAAは,オフショア・アウトソーシングによって,2003年は実質賃金が0.13%増加し,2008年には0.44%増になるとみる。

 ITAA会長のHarris N. Miller氏は,「オフショア・アウトソーシングは米国内のIT雇用を妨げるという見方が誤りであることが分かった。実際は,国内の企業の生産性と競争力を向上している」と指摘し,次のように説明した。「企業は,アウトソーシングによって浮いたリソースを新しい製品やサービスの開発に投資しており,結果的に市場の拡大に貢献している。それが,雇用の拡大と実質賃金の向上という相乗効果をもたらしている」(同氏)

 その他の主な調査結果は次の通り。

・オフショア・アウトソーシングによって,2003年における米国の国内総生産(GDP)は336億ドル増加した。2008年には,オフショア・アウトソーシングによるGDPの増加が1242億ドルに達する見通しである。

・ITアウトソーシング市場は年平均約26%で拡大し,2003年の100億ドル規模から,2008年には310億ドル規模に成長する。また,アウトソーシングによるコスト削減も2003年の67億ドルから,2008年には209億ドルに増加し,その多くは米国内に投資される。

・ITアウトソーシングは,諸外国の購買力を向上し,米国の輸出力を増大する。オフショア・アウトソーシングによって,米国の輸出額は2003年に23億ドル,2008年に90億ドル増加する。

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