バックオフィス業務の新興アウトソーシングが台頭する一方で、IT部門を切り出すITO(ITアウトソーシング)も依然として健在だ。日本のITOの07年までの伸び率はガートナーによると、米国の年率6.6%増を大幅に上回る12.5%増が期待される「伸び盛りの市場」。07年の売り上げ規模は3兆3000億円と目されている。

 ここでは、戦略的アウトソーシング(SO)が一段落した日本IBMをしり目に、メインフレームの富士通や日立製作所、NECに混じり、民需市場開拓が急務のNTTデータが積極的だ。ITサービスのシーエーシー(CAC)も連結経営の効果を狙い既に情報子会社4社を買収、03年度の単独の減収減益を買収子会社の業績で連結を増収増益に導いた。

 「SOの実態は“メーカーの戦略”」と喝破する日本ユニシスは、9.11テロにヒントを得たBC(ビジネスコンティニュティ)の共同型アウトソーシングを仕掛けるなど、ニッチ市場の深耕を狙う。欧米市場でコンパック合併後、200社を超えるITOを獲得し米IBMや米EDSを追う米HP(ヒューレット・パッカード)。日本ではNECと協調した三共の大型SO商戦で日立に土壇場で敗れたものの、大型案件獲得の機会をうかがう。

 ITOとひと口に言っても、それは(1)顧客企業のメインフレームやサーバーを、共同型データセンターに収容し運用管理を行う「データセンター型アウトソーシング(DC型)」、(2)カスタムメイドであれパッケージであれ、顧客の業務アプリケーションを保守・運用・改善する「アプリケーション・マネジメント・アウトソーシング(AMO)」、(3)顧客企業と合弁会社を設立したり、情報子会社の買収やIT要員を吸収するフルスコープ型の「戦略的アウトソーシング」の3種類がある。

 日立の立岡繁戦略アウトソーシング事業統括本部長は「アウトソーサにとり、収益をDC型のITO事業だけに頼ることはできない。それが文字通りシェアードタイプに移行できれば活路も開けるが、今のままでは顧客にとってもコスト削減効果が薄くメリットが少ない」と、アウトソーシングの全方位を標ぼうする。顧客のIT人材や技術の修得、運用の複雑さの観点からDC型のアウトソーシングは増えるが、DC型にAMOやSOを加えて収益のバランスをとることが肝のようだ。だが、収益性が高いと見られたSOといえども税引前利益で10%確保は至難の業だという。

 富士通の石田一雄アウトソーシング事業本部長は「DC型の収益性は過分ではないが十分にある」と話す。顧客がメインフレームの先行きにどの程度の不安を抱いているかが収益性を左右する。既に型式の古いメインフレームは保守部品もままならず、それを新型メインフレームやオープンに移行させずに使い続ける場合、データセンターへの持ち込みは急増するだろう。「そこなら部品のコントロールが可能だし、より大型機によるシェアリングという規模の経済効果を期待できる」(同)という読みだ。

 富士通によれば、同社の稼働メインフレームは4000社で5000台。うち2500社が運用をアウトソーシングする希望を持つ。AMOについても「メインフレーム系のカスタムソフトが富士通に流れてくる」(同)と皮算用。03年度は55社をAMO顧客として獲得、04年度は2.3倍の125社を見込んでいる。

 「アウトソーシングに超積極的」とやる気満々なのがNECの工藤秀憲システム・サービス事業本部長。05年にネットワーク、AMO、SO、BPO、BCなどの新アウトソーシング分野が、運用中心の売り上げを逆転する見込みだ。BCは日本ユニシスもリーダーの座を狙う。トヨタ自動車の災害時の立ち上げプランは、3日で人を確保、7日目でラインを整備し、10日目から操業を開始する。このプランに乗れないメーカーには部品を発注しない方針だ。「バックアップセンターとしてBCアウトソーシングの市場性は見えている」と、梅原吉雄アウトソーシング事業部長は期待をかける。知恵を出せば、ITOも流行遅れにはならないようだ。

(北川 賢一=主席編集委員)