「IT企業は海外へのアウトソーシングを検討する場合,低い人件費ばかりに目を向けがちだが,海外へ業務委託することによって発生するコストも忘れてはならない」。米META Groupは米国時間1月13日に,海外アウトソーシングのリスクとコストについて調査した結果を発表した。

 たとえば,インドで従業員をフルタイムで雇用した場合,人件費は米国より40%低い。しかし,事業モデルの違いなど, 海外へ発注するために発生するコストが存在することから,初年度に節減できるのは15~20%だという。

 海外へのアウトソーシングは今後2年間に,20~25%成長するとみる。META Group社は,企業がさまざまなリスクを考慮して, 不測の事態が起こった場合の対策を講じることが重要だと指摘する。

 「ベンダーが納品できなかった場合など,事前に,最悪のシナリオを検討することを忘れている企業が多い。リスクを検討した上で,アウトソーシングを思いとどまる,事業戦略を変更する,アウトソーシングを積極的に推し進めるなど,各企業が進む方向はさまざまだろう。結果がどう出るにしろ,リスク分析を怠るのは大きな間違いだ」(META Group社副社長のDean Davison氏)

 海外へアウトソーシングする場合に考慮すべき主なリスクは次の通り。

・セキュリティ:セキュリティ侵害と,知的財産およびプライバシ保護に留意する必要がある。

・開発費:予算内で完了するプロジェクトはまれである。プロジェクトの大半は,開発費が予算を最大15%上回る。

・異文化:異文化教育プログラムを実施して,現地の商習慣を知るなど,異文化コミュニケーションを軽視すべきではない。

・知識の移転:初年度は,知識移転に要する時間とコストのため,生産性が20%減少する。

◎関連記事
米国でオフショア事業への風当たりが強まる
米国IT業界は回復すれども,職は海外へ流出
「企業の3分の2はソフトウエア開発をアウトソース」,米調査会社 
「ITアウトソーシングの市場規模は,顧客の分野によって大きく異なる」,米IDCの調査
「予想されるオフショアへのアウトソーシングの増加,必ずしもITサービス業の雇用縮小を決定付けるものではない」,米IDC 
ユニシス,インド大手ベンダーとアウトソーシングで提携 
米HP,アイルランドBank of IrelandとITサービス・アウトソーシングで6億ドル規模の提携
独Draegerwerk,仏Cap Geminiの独法人とITアウトソーシング契約を締結,子会社を売却 

[発表資料へ]