米BroadcomとオランダのRoyal Philips Electronicsが米国時間9月8日に,それぞれ小型/低消費電力のWi-Fi(IEEE802.11b)対応LSIを発表した。

 Broadcom社のLSIは,単一チップでWi-Fi(IEEE802.11b)を利用可能とする「Broadcom BCM4317」。「AirForce One」無線LANソリューションの1製品で,大きさは郵便切手と同程度。現在利用可能なほかのWi-Fi対応LSIに比べ消費電力が最大97%少ないという。

 BCM4317について同社は,「世界初の単一LSIで,すべてCMOSで構成した無線LANトランシーバ」と説明する。競合製品が複数のLSIや部品を必要とするのに対し,同社のAirForce One製品は2.4GHz無線機能,パワー・アンプ,IEEE802.11bベースバンド・プロセサ,メディア・アクセス・コントローラ(MAC),Tx/Rxおよびダイバシティ・スイッチのほか,すべての無線部品を1つのシリコン・ダイ上に集積している。「これまでにないレベルで集積したことで,100種類以上あった部品が不要になり,従来のmini-PCI対応Wi-Fiソリューションに比べ87%の小型化を実現できた」(同社)

 同LSIは同社の省電力ソフトウエア「SuperStandby」を採用し,消費電力を抑えている。SuperStandbyでは,できるだけ短時間,必要最小限の回路に電力を供給するよう制御する結果,米Intelの無線LANソリューションCentrinoのスタンバイ・モードに比べ,消費電力を最大97%減らすことができたという。

 さらにBCM4317は,Wi-Fi Protected Access(WPA)およびCisco Compatible Extensions(CCX)といったセキュリティ技術に対応するほか,暗号化技術Advanced Encryption Standard(AES)をハードウエアで実装している。

 AirForce OneソリューションにはBCM4317に加え,Wi-Fi対応参照設計BCM94317SDおよびBCM94317CF,Bluetooth対応単一LSIのBCM2035,Wi-FiとBluetoothの両方に対応する参照設計BCM94317SBがある。いずれのLSI/参照設計も,同社の早期アクセス・パートナ向けに出荷を始めている。

 一方Philips社のIEEE802.11bソリューションは,スタンバイ時の消費電力が3mWという製品。無線処理用LSI「BGW100」と,ベースバンド・プロセサ/MAC処理用の「SA2443」という2つのLSIで構成する。

 同ソリューションの消費電力は,現在利用可能な製品のなかで最も低いという。さらに,「ホスト・プロセサに負荷を与えないので,モバイル機器のバッテリ駆動時間やアプリケーションの動作速度に悪影響を与えない」(同社)。基板上の実装面積は300mmで,「競合ソリューションに比べ約50%小さい」(同社)

 同ソリューションは,サンプル品を2003年第4四半期に,量産品を2004年第1四半期に利用可能とする。1万個ロット時の価格は12.00ドルの予定。

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[発表資料(Broadcom社)]
[発表資料(Philips社)]