東芝の米国法人Toshiba America Electronic Components(TAEC)は,ガリウム・ヒ素(GaAS)ヘテロ接合バイポーラ・トランジスタ(HBT)によるマイクロ波モノリシックICパワー・アンプ「T1M53」を米国時間9月2日に発表した。5GHz帯の無線LAN用ICで,東芝が開発した製品。

 同パワー・アンプの対応周波数は4.9GHz~5.825GHzで,IEEE802.11a用のアクセス・ポイントやネットワーク・カードのほか,欧州のHyperLAN2や日本のHiSWANaといった無線ネットワーク規格にも適しているという。

 TAEC社では,「利得が24dB(typ.)と高く,高出力時における誤差ベクトル量(EVM)に優れ,高品質で安定した無線データ転送が可能」とする。「さらに消費電力が140mA(typ.)と極めて小さいので,携帯用電子機器のバッテリ駆動時間の延長に貢献する」(同社)

 TIM53のそのほかの主な仕様は以下の通り。

・出力電力(P(OUT)):18.0dBm
・電力利得(G(P)):24dB( V(CC)=3.3V,V(CON)=2.9V,P(OUT)=18dBm,f=5.2GHz)
・消費電力(I(TOTAL)):140mA(typ.)(V(CC)=3.3V,V(CON)=2.9V,P(OUT)=18dBm,f=5.2GHz)
・EVM:3.5%(typ.)(18dBm,64QAM)
・パッケージ:16ピンCSP
・サイズ:3mm×3mm×0.85mm

 東芝の小信号ディスクリート半導体デバイス部門アプリケーション・エンジニアリング上級マネージャのHideki Ohto氏は,「より高い周波数の5GHz帯無線LANへの移行が進み,手軽に使える家庭用ネットワークで高品質ビデオを転送したいという要求が高まっている影響で,無線通信においてビット・エラー率や通信可能範囲などの改善が必要になった」と説明する。

 「5GHz帯LANの通信範囲を広げるには,送信回路のパワー・アンプの出力を高め,減衰損失を最小限に抑えればよい。TIM53では,高出力,高利得,低EVMで安定した無線データ転送を実現し,こうした問題を解決している」(同氏)

 TIM53は,サンプル品を2003年9月より15ドルで提供する予定。2003年12月に量産を開始し,製品価格はその時点で改めて発表する。またTIM53と組み合わせて使うシリコン・ゲルマニウム(SiGe)トランジスタ「MT4S102T」および「MT4S104T」はすでに利用可能で,価格はいずれも50セント。

◎関連記事
「ハンドセット市場におけるGaAsデバイスの利用が増加」,と米ABIの調査
「好調な2002年の無線LANチップ市場,出荷個数は前年から2倍以上の2000万個」,米調査より
「無線LAN用LSI市場,2007年に1億4750万個出荷し11億3000万ドル規模」,米ABIの調査
「世界の802.11対応無線LAN市場,2003年Q1の売上高は前期比1%増」,米調査
次の無線LAN規格って,どれが本命?
54M無線LANの主役は「g」に決まり
“復権”を果たしたIEEE802.11aに注目
「2007年のUWB用LSIの出荷数は6300万個,現行のLAN技術を置き換える可能性が高い」,米社の調査

[発表資料へ]