米IBMはグリッド・コンピューティング機能に対応するインターネット・インフラ・ソフトウエア「WebSphere Application Server V5.0.2 -- Enterprise」を米国時間7月21日に発表した。

 同ソフトウエアは“交通整理を行う警官”のような仕組みを備えるという。アプリケーションの動作負荷を自動監視し,状況に応じ一時的にトラフィックを1台のサーバーから別のサーバーに振り分ける。この機能により,数10台~数100台規模のサーバーで構成されるクラスタを,突発的な負荷変動に自動対応可能な単一環境として運用可能になるという。

 グリッド・コンピューティング環境では,1組織内や複数の組織に存在するさまざまなコンピュータやシステムを,すべて1つの巨大なコンピューティング・システムとして利用できる。「こうした単一システムは,大規模で負荷が集中するため1台のコンピュータだと効率的に扱えない問題や処理でも,容易に対応できる」(IBM社)

 WebSphereのグリッド・コンピューティング機能は,同社が2003年5月に買収したカナダのThinkDynamicsの技術を応用したものという。ThinkDynamics社の技術を使うと,企業全体に散らばって存在するハードウエア/ソフトウエア・リソースを,WebSphere用サーバーからなるクラスタ内へ必要に応じて組み込むよう設定しておける。その結果,クラスタ内で生ずる負荷の偏りを自動的に解決できるようになる。

 そのほかのWebSphereの主な新機能は以下の通り。

・WebSphere Performance Advisor:動作中のシステムからデータを収集し,それをもとにアプリケーションの性能向上につながる設定の変更方法などを管理者に提示する。

・Automatic Backup Clusters:通常使用するメインのクラスタに障害が発生したときのために,バックアップ用クラスタ・システムを自動的に設定する。

 WebSphere Application Server V5.0.2 -- Enterpriseの価格は1プロセサ当たり3万ドルとし,7月25日より利用可能とする。

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一般企業にとってのグリッド・コンピューティング(1)

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