米IBMは,これまで学術研究向けに提供していたグリッド・コンピューティングを商用展開する。同社は米国時間1月27日に,航空宇宙,自動車,金融,行政,生命科学の主要産業を対象にした10種類のグリッド・コンピューティング・サービスを発表した。

 IBM社世界グリッド・コンピューティング部門ジェネラル・マネージャのTom Hawk氏は,「グリッド・コンピューティングを活用したe-businessオンデマンドがついに実現する。商用分野のグリッド・コンピューティングは拡大する見通しだ」と述べた。

 IBM社は,航空宇宙,自動車,金融,行政,生命科学の各産業のニーズに応えるため,「研究開発,エンジニアリングと設計,ビジネス分析,事業の最適化,行政展開の5分野に焦点を当てたグリッド・コンピューティングを構築する」(IBM社)としている。

 今回発表した主なグリッド・コンピューティング・サービスは以下の通り。

・金融(ビジネス分析,事業の最適化):金融サービス企業向けに,金融取引処理をを高速化する「Analytics Acceleration Grid」と十分に活用されていないコンピューティング・リソースやストレージ・リソースの利用効率を引き上げるための「IT Optimization Grid」を提供する

・生命科学(研究開発):「Analytics Acceleration Grid」と,「Information Accessibility Grid」を用意する。前者は,計算能力を引き上げ,新薬の開発時間短縮を可能にする。後者は,標準的なデータ形式に対応していない既存のデータ・リソースや資産でも,共通のデータ・アクセスを行えるようにする

・自動車と航空宇宙(エンジニアリングと設計):既存のインフラへの投資を最適化し,コスト管理を支援する「Engineering Design Grid」と,パートナ企業間でのデータ共有と作業分散を可能にする「Design Collaboration Grid」を提供する

・行政(行政展開):データやファイルのインタフェースを統合する「Information Access Grid」を提供し,組織全体にわたる既存のデータ・リソースなどの資産活用を支援する

 またIBM社は,グリッド・ミドルウエア・ベンダーPlatform Computing社およびDataSynapse社と提携を結んだことを発表した。「IBM社が企業向けにグリッド・コンピューティングを展開するにあたり,両社は重要な役割を果たすことになるだろう」(IBM社)。IBM社はこのほか,ミドルウエア・プロバイダのAvaki社,Entropia社,United Devices社とも提携を結んでいる

 さらにIBM社は,米Charles Schwabとグリッド・コンピューティングの研究開発プロジェクトで協力体制を敷いていることも明らかにした。プロセサの効率を引き上げ,「4分以上かかっていた金融アプリケーションの処理時間を15秒に短縮することに成功した」(IBM社)という

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