米IDCは,2003年における世界IT支出と今後の展望について調査した結果を米国時間7月16日,発表した。それによると,2003年のIT支出は8720億ドル強で,前年比約1%増にとどまる見通しだ。
地域別にみると,米国では,ソフトウエア/サービス分野の支出がわずかに増加するが,価格競争によりハードウエア分野の支出が減少するため,全体のIT支出は横ばいとなる。西欧はこれまでの予測ほど成長は期待できず,支出増加率は1%に満たない見通し。アジア太平洋地域は,日本は1%減少することから,1.2%増にとどまるとみる。しかし中国の展望は明るく,2003年に前年比8%増,2004年に同16%増が見込まれる。そのほかに,インド,タイ,スペイン,ロシア,南アフリカなどの成長が期待される。
IDC,Worldwide Black Bookプログラム担当ディレクタのStephen Minton氏は,「海外市場は相変わらず不安定だ。西欧の中でもとりわけドイツの経済状況が軟調で,IT支出回復の足かせとなっている。また強いユーロが,ITサプライヤのドルによる売上高を伸ばす一方で,経済全般に大きな影響を及ぼしている」と説明した。
IDC,経済学者のKevin White氏は,「IT支出の伸びにまだ反映されていないが,米国経済は回復の兆しをみせている」と述べた。
2004年は,経済の回復がIT支出を後押しし,市場の大半が堅調に推移する。IDCは,米国で4%,西欧で3.7%,アジア太平洋地域(日本を除く)で10%以上の成長率を見込んでいる。
2004年に関するその他の予測は以下の通り。
・音声/データ統合型デバイスを含むスマート・ハンドヘルド・デバイス(SHD)分野の売上高が50%以上増加する
・ネットワーク機器の売上高が回復し,2003年の前年比2%減から,2004年には前年比5%増となる
・パソコンによる売上高は,買い替えやアップグレードが進み,2000年以来初めてのプラス成長を記録する
・システム・インフラ・ソフト分野の成長率は6%
「IT支出は今後18カ月間,緩やかだが継続的に成長する。世界経済が,予測不可能な要因によって大きな影響を受けない限り,IT支出はこれまで抑制されていた需要,インフラのアップグレード,技術革新,企業による収益の安定などによって,ゆっくりと回復に向かうだろう」(Minton氏)
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