米マイクロソフトと米リンクス，デジタルHDTVのモバイル配信をNAB2003で披露

早坂利之

2003.04.08

　米Microsoftとデジタル・テレビ技術を手掛ける米LINX Electronicsは，ラスベガスで開催中の放送関連の展示会「NAB 2003」で，デジタルHD（high-definition）TV映像のモバイル配信技術を披露する。 Microsoft社のデジタル・メディア・プラットフォーム「Windows Media 9 Series」と，ATSCに類似したLINX社の「LINX Mobile」伝送システムを利用する。両社が米国時間4月7日に明らかにしたもの。

　「米Sinclair Broadcast Group TV放送局の無線放送を，ラスベガス市内を移動するワゴン車で受信するデモンストレーションを行う」（両社）

　LINX社が開発したLINX Mobile伝送システムは，シングル・キャリアのVSB（残留側帯波）を使った6MHzのチャネルを用いるというもの。米国のデジタルTVが使用するATSC 8VSBと類似しており，通常の半分のデータレートに当たる9Mbpsの負荷でデータ転送を可能にする。

　Windows Media Audio and Video 9の圧縮技術によって，HDテレビ画像をMPEG-2で必要とする3分の1のビット・レートまで圧縮する。これにより，デジタルTV放送局が流すHDビデオと5.1チャンネルのサラウンド・オーディオを，テレビやパソコンといった機器に5Mbpsで伝送する。また，SD（standard-definition）映像の場合でも，ビットレートを1.5Mbpsまで抑えることが可能だという。

　「LINX Electronics社と当社の技術を併用すれば，HD映像をMPEG-2の3分の1のビット・レートに圧縮でき，デジタルTVを移動中のさまざまなデバイスで視聴できるようになる」（Microsoft社，Windows Digital Media部門担当ジェネラル・マネージャのAmir Majidimehr氏）

　モバイル配信が実現すると，移動する自動車，列車，フェリーなどにある，テレビ，ノート・パソコン，ハンドヘルド機器などに，HD／SDビデオとデータを伝送できるようになる。とりわけ，デジタルTVの導入が進んでいない国で有効利用できるという。

　「南米諸国では，米国のデジタルTV標準であるATSCはモバイル配信に対応していないため，不利な立場にある」と，LINX Electronics社社長のBob Rast氏は説明する。「しかし今後は，ATSC標準を採用して，ATSC 8VSBとLINX Mobileのデュアル・モードを提供すればよい」（同氏）。LINX社は，LINX ATSC対応チップの面積をわずか2％拡大することで，モバイル機能を追加できるとしている。