米In-Stat/MDRが米国時間12月4日に,デジタル地上波TV(DTT)用セットトップ・ボックス(STB)市場について調査した結果を発表した。それによると,2006年におけるDTT STBの市場規模は14億ドル強で,DTT STB向け半導体の売上高は5億ドルをやや上回る程度になるという。

 DTT STB市場は当初,2005年に24億ドルを超える規模に成長すると予測されていた。しかし,英ITV Digital(前OnDigital)やスペインのQuiero TVの倒産,他のペイTV事業者によるDTTサービス提供開始の延期,また世界経済の低迷によるDTT導入の遅延などが災いした。

 In-Stat/MDR社主席アナリストのGerry Kaufhold氏はDTT放送について,「現在のアナログ地上波テレビ・サービスにとって代わる次世代のテレビ・サービスだ。政府も,アナログからデジタルへの移行に熱心で,モバイル通信事業者に早く周波数域を売り渡したいと考えている。テレビ・メーカーやSTBの開発者は,デジタル・テレビに対する需要が喚起され,膨大な市場が誕生するのを今かと待ちわびている。いずれDTT STBの売上げは,ケーブルや衛星放送向けのSTBを凌ぐだろう」と予測した。

 しかし米国でDTTを大規模に導入した場合,「地上波の送受信技術がうまく動作するのか未確認であるなど,DTTに関する問題は山積みだ」(Kaufhold氏)と指摘する。

 「消費者は,DTT特有の高度な機能を実際に利用できない限り,DTT STBの購入をためらうだろう。テレビ放送局が,自社の番組やサービスを新しいデジタル・プラットフォームへ移行させなければ,DTTの普及はあり得ない。現在業界は,英BBCとパートナー企業が開始した,欧州地上波規格DVB-T(Digital Video Broadcast-Terrestrial)対応の『Freeview』サービスの行方を見守っている状態だ」(同氏)

 その他の主な調査結果は次の通り。

・少なくとも2006年までは,デジタル・ケーブル・サービスや衛星サービス用STBが,DTT STBの出荷台数を上まわる。しかし長期的には,DTT STBの出荷台数が追い抜く見通し

・欧州ではDTT市場の拡大を目指してDVB-T対応サービスを無料で提供し始めている。しかし安定した需要が生まれるまでには時間がかかる

・米国では今後生産されるテレビに,ATSC対応受信機を搭載することが義務づけられており,DTT STBの普及に影響を与えるだろう。しかし,これらの新しいテレビが,DTT信号を問題なく受信できるかは不明

・DTT STBの市場として最も期待できるのはアジアだが,市場が立ち上がり始めるのは2005年以降。また,同市場が確立して何らかの影響を持つようになるのは,それからさらに数年後になる

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