米GartnerのDataquestがシンガポールで現地時間2月5日,2002年におけるアジア太平洋地域のパソコン市場について調査した結果を発表した。それによると,2002年における同地域のパソコン出荷台数は2170万台で,前年と比べ8.6%増加した。世界市場の前年比3%増を上まわる伸び率となった。

 「2002年に世界市場の成長率がプラスに転じたのは,アジア太平洋地域の活況に負うところが大きい」と,Dataquest社Computing Platforms Asia/Pacificグループ担当上級アナリストのLillian Tay氏は指摘する。

 「家庭や中小企業向けが好調で,ノート・パソコンに対する需要とともに市場の成長を後押しした。ベンダーはこれらの分野に対して,分割払いやバンドル・プログラムを提供するなど,買い替えを喚起するために精力的なマーケティングを行った」(Tay氏)

 アジア太平洋地域の首位ベンダーは中国のLegendである。そのあとに米Hewlett-Packard(HP),米IBMと続く。4位に付けた米Dell Computerの出荷台数は前年比23%増で,2ケタ台の伸び率をみせた唯一の大手ベンダーだった。

 「Dell社はオーストラリア,マレーシア,シンガポールなどで地歩を保ったほか,中国市場などに注力したことが功を奏した」(Tay氏)

■表1 2002年アジア太平洋地域のベンダー別出荷台数

                               2002年  2002年   2001年   2001年
ベンダー名                    出荷台数  市場   出荷台数   市場  成長率
                                       シェア            シェア (%)
                                       (%)            (%)

Legend                       2,463,733  11.4   2,300,759   11.5   7.1
Hewlett-Packard              2,252,279  10.4   2,187,299   11.0   3.0
IBM                          1,546,624   7.1   1,458,011    7.3   6.1
Dell                         1,225,365   5.7     996,147    5.0  23.0
Samsung Electronics          1,211,024   5.6   1,221,300    6.1  -0.8
その他                      12,965,729  59.8  11,778,012   59.1  10.1

合計                        21,664,754 100.0  19,941,528  100.0   8.6

注:  HP社のデータは米Compaq Computerの出荷台数を含む。

出典:Dataquest社(2003年2月)

 国別にみると,中国が首位を維持し,出荷台数ベースのシェア42.9%を占めた。タイ(前年比39.8%増)やインド(同11.8%増)が健闘し,アジア太平洋地域の成長に貢献した。一方,香港(前年比4%減)やシンガポール(同0.3%減)といった成熟市場は,景気の低迷や低雇用率が影響した。

■表2 2002年アジア太平洋地域の国別出荷台数

                               2002年  2002年  2001年    2001年
国名                        出荷台数   市場   出荷台数    市場  成長率
                                       シェア            シェア  (%)
                                      (%)             (%)

中国                        9,291,950  42.9   8,551,509   42.9   8.7
韓国                        2,983,149  13.8   2,964,324   14.9   0.6
オーストラリア              2,106,588   9.7   1,924,259    9.6   9.5
インド                      2,055,010   9.5   1,838,063    9.2  11.8
台湾                        1,250,852   5.8   1,112,943    5.6  12.4
マレーシア                    775,200   3.6     669,509    3.4  15.8
タイ                          717,627   3.3     513,505    2.6  39.8
香港                          567,274   2.6     591,105    3.0  -4.0
インドネシア                  495,200   2.3     445,091    2.2  11.3
シンガポール                  482,085   2.2     483,668    2.4  -0.3
ニュージーランド              349,405   1.6     305,102    1.5  14.5
フィリピン                    264,686   1.2     248,467    1.2   6.5
ベトナム                      177,266   0.8     147,991    0.7  19.8
その他                        148,462   0.7     145,992    0.7   1.7

合計                       21,664,754 100.0  19,941,528  100.0   8.6

出典:Dataquest社(2003年2月)

 ノート・パソコンの出荷台数は前年比25%増で,デスクトップ・パソコンの伸び率6%を大きく上回った。また,ノート・パソコンの出荷台数がパソコン市場全体で占める割合は,昨年の14%から16%へと拡大した。Tay氏はその理由を,「低価格化と豊富な品揃えにより,ノート・パソコンの需要が高まった」と説明する。

 Gartner社の最近の調査によると,アジア太平洋地域の企業は4~5年おきにパソコンを買い替える傾向があるという。Y2K問題を懸念して1999年頃にパソコンを購入するユーザーが多かったため,2003年に買い替え需要が高まる可能性がある。しかしTay氏は「企業は厳しい目で品定めをすることが予想されるので,ベンダーはROI(投資利益率)に重点をおく必要がある」と忠告した。

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