米GartnerのDataquestは米国時間1月21日,2003年におけるIT支出に関して調査した結果を発表した。それによると,2003年はすべての業界においてIT支出が成長し,前年比4.9%増の2兆1000億ドルに達するという。IT支出を削減した業界は2001年に5部門,2002年に3部門となり,この数年間で縮小傾向が和らいでいる。

 Dataquest社は14業界を対象に今後の動向を予測した。なお,調査は企業のIT支出(社内支出を含む)のみに焦点を当てており,消費者によるIT支出は含まない。

 2003年から2004年にかけて最も強い伸びをみせるのは,政府機関とヘルスケアである。しかしいずれも成長率は,一けた台にとどまる見通しだ。

 Dataquest社IT Servicesグループ部門主席アナリストのRishi Sood氏は,「政府機関のIT支出は,防衛分野が増加を後押しする。また,アウトソーシングや施設の近代化なども,IT支出の増加に貢献する。一方,州や地方レベルの行政機関では,新しく就任した知事がこれまでの財政見直しを行い,IT支出の引き締めを実行するだろう」,と予測した。

 ヘルスケア業界のIT支出をけん引するのは,患者の安全確保,管理コストの増大,コスト削減戦略の必要性,プロセスの標準化と自動化への移行などである。

 金融サービス,製造,政府機関,通信の4業界を合わせると,2003年における世界のIT支出の67%を占める。しかし,金融サービスと製造の両業界は2003年~2004年にかけて,あまり成長しない。

 製造業界の企業は,「予算の制約,システム統合,過去のIT投資による不十分なROI(投資回収)に頭を悩ませることになる。また,目新しい技術やアプリケーションの不足といった問題にも直面する」(Dataquest社IT Servicesグループ担当上級アナリストのGeraldine Cruz氏)。「2003年は,短期間にROIを実現する必要があるため,新しいITプロジェクトに着手するより,既存のIT資産を活用することに注力する」(同氏)

 金融サービス業界の企業は,2003年に慎重な姿勢をとるものの,2004年にはIT予算を増額する。2003年は,証券や保険分野で支社の構造改革やインフラ構築の取り組みが行われる。そして2004年には,保険や投資銀行などの分野で,ビジネス・プロセスのアウトソーシングが進む。

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