米GartnerのDataquestが米国時間5月30日に,世界の金融サービス業界におけるIT支出に関する調査結果を発表した。それによると,2002年の支出額は合計で3500億ドルにのぼり,2001年の3261億ドルに比べ7.3%増加するという。「金融サービス業界のIT支出は,2005年まで1けた成長を続け,4744億ドルを超えるだろう」(Dataquest社)

 Dataquest社ITサービス・グループ上級アナリストのSusan Cournoyer氏は,「90年代に当たり前だった“2けた成長”は過去のものだ」と述べている。「不景気から景気回復への緩慢な動きは,需要の乏しい期間を生き残ろうとするITベンダーにプレッシャーを与え続けている」(同氏)

 そのほかの主な調査結果は以下の通り。

・2001年終盤に金融サービス企業を対象に行った調査では,「取引するITベンダーの数を減らす」という回答が42%だった。2000年の22%から増加している。

・金融サービス業界では,ソフトウエアおよびITサービスに対するIT支出の伸びが最も大きい。2000年から2005年の5年間の年平均成長率は,ソフトウエアが13.3%,ITサービスが11%。

・景気低迷,CRM支出に対する再評価,不適当なインフラに関する問題が重なり,多くのIT投資が保留された。この傾向は,テロ事件が起こった2001年9月11日以前からみられる。

・テロ事件の影響でセキュリティインフラに対する投資が行われたことと,eビジネスおよびCRMに対する投資が最適化されたことにより,IT支出は回復が加速化する。

・テロ事件に関係する支出を金融会社が行ったため,短期的に支出減少の動きが激しさを増した。しかし2002年後半には,保険会社が保険需要の増加に対応するため,IT支出を強化する。

・アプリケーション/業務処理アウトソーシング,Webサービス,金融サービス・ソフトウエアに関するIT支出が今後増える。これは,金融に特化した業務処理の改善が再び注目されるようになるため。

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