米MPEG LAはMPEG-4 Visual特許のライセンス料徴収プログラム「MPEG-4 Visual Patent Portfolio License」に関して声明を米国時間3月28日に発表した。業界で問題となっている同ライセンス・モデルについて,その妥当性を改めて強調しながらも,今後特許保有企業と再検討し「その内容は変更する可能性がある」(MPEG LA社)としている。

 MPEG-4 Visual Patent Portfolio Licenseは同社が2002年1月31日に発表した,MPEG-4 Visual(SimpleプロファイルとCoreプロファイル)のライセンス・プログラムである。この標準技術に使われている18社の特許をMPEG LA社がまとめ,一括して企業にサブライセンスするというもの。

 このライセンス・プログラムは,MPEG-4のデコーダ/エンコーダの製造/販売に対するライセンス料に加え,コンテンツ所有者/提供者に対しても,再生時間に応じた料金を課すという内容が盛り込まれている。これについて,米Apple Computerやストリーミング・メディアの業界団体が反論しており,業界に波紋を広げていた(IT Proの関連記事)。

 今回のMPEG LA社声明の主な内容は以下の通りである。

・1月31日に同プログラムを発表して以来,多くの人々から意見が寄せられた。詳細については現在も検討中である。当社が受け取った意見は貴重なもので,考慮することになる。

・同プログラムの目的は,妥当なライセンス料を業界全体の企業に対して非差別的に課すこと。サービス・プロバイダやコンテンツ・プロバイダは,MPEG-4ビデオ・データのストリーミングやダウンロードを行うことで支払いを受けた場合にのみライセンス料が課せられる。

・数多くの特許保有企業が持つ必要不可欠な知的財産を,単一のライセンスで公平/妥当/非差別的に提供することで,MPEG-4 Videoなど新しい技術の市場への導入を促進する。

・MPEG LA社の事業は,ライセンス・プログラムが市場全体に受け入れられることにかかっている。そのため,市場の状況に合った適切なライセンスを作る必要性に対し細心の注意を払っている。そこでMPEG LA社は特許保有企業との作業を続け,ライセンスに妥当性があるとの反応を得られるようにする。

・4月後半に特許保有企業と再度打ち合わせの場を設け,市場に対してできるだけ早くより詳細な情報を提供する。

・できる限り迅速に作業を進めているが,単一のライセンス・プログラムを作るには少なくとも18社の合意を取り付ける必要があり,未決定の事柄も残っている。そのため,困難な点があり,プログラムを仕上げるまでにはまだ時間がかかる。

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