独自ビデオ圧縮技術を手がける米On2 Technologiesと米Duckが,米司法省に抗議の書簡を送った。ビデオ音声圧縮・復元方式「MPEG」技術の特許ライセンス業務を行う米MPEG LA(Licensing Administrator)」の合法性について調査するよう要求している。On2社が米国時間3月14日に明らかにしたもの。

 書簡はOn2社の社長兼CEOであるDouglas A. McIntyre氏が,司法省の副長官であるCharles James氏に宛てたもの。

 このなかでMcIntyre氏は,MPEG LA社という団体の存在に異を唱えており,1997年に司法省が行ったMPEG LA社の承認を取り消するよう求めている。

 On2社の抗議は,MPEG LA社が今年1月31日に提案したMPEG-4 Visual(SimpleプロファイルとCoreプロファイル)特許のライセンス・プログラムに端を発している。このライセンス・プログラムは,MPEG-4のデコーダ`/エンコーダの製造/販売に対するライセンス料に加え,コンテンツ所有者/提供者に対しても,再生時間に応じた料金を課すというもの。これについては,米Apple Computerなども反論しており,業界に波紋を広げている(IT Proの関連記事)。

 なおMPEG LA社とは,複数の企業が保有するMPEG-2/MPEG-4関連技術の特許ライセンス管理を一括して行う特許プール会社である。1997年6月26日に司法省から認定を受けている。

 On2社McIntyre氏の書簡の内容は以下の通り。

・MPEG LA社は1997年に司法省に送った承認プロポーザルのなかで,MPEG-2を国際標準としているが,これは数あるなかのビデオ圧縮方式に過ぎず,事実と異なる。事実米MicrosoftのWindows Mediaや米RealNetworks,On2社,米Sorensonのといった数多くのビデオ圧縮技術が存在しており,こうした企業はそれぞれ特許を保有している。

・司法省がMPEG LA社を承認して以来,私はMPEG LA社がこれを利用してその市場勢力を拡大し,最終的には独占的な料金を消費者や企業に課すのではないかと懸念していた。残念なことに先日これが現実になってしまった。

・MPEG LA社に特許ライセンスを移管している企業は,現在デジタル・テレビのビデオ圧縮分野で95%のシェアを持っている。RealNetworks社,Microsoft社,On2社がデコーダ(プレイヤ)を無料で提供しているのに対し,MPEG LA社は1システム当たり0.25ドルを請求しようとしている。これに加えコンテンツ所有者/提供者に対しても,再生時間1時間当たりに2セントを課すつもりである。
 
・MPEG LA社は1997年以来,デジタル放送のビデオ圧縮技術分野で市場を独占してきた。同社はこれを利用して,今度はインターネットなどの通信手段を利用する消費者/企業に不当なライセンス料を押しつけようとしている。

・1997年の(MPEG LA社の)承認を支えていたものは,「国際的なビデオ圧縮標準の必要性とポジティブな市場効果」だったと思われる。今日の技術では,異なる圧縮技術のストリーミング・コンテンツを同じ一つのプラットフォームで扱うことが可能。これは1997年に明確ではなかったが今日では明確である。複数の標準技術が存在するということは,価格を下げ,消費者の選択肢を広げることにつながる。

・司法省のガイドラインでは,特許プールは,独占ではあってはならず,市場に何らかの利益をもたらさなければならない。この特許プールで利益を得るのはMPEG LA社だけのように思われる。

・司法省が1997年の承認を撤回し,MPEG LA社に対し特許プール会社でなく,特許をもつ個々の企業として活動するよう指導して欲しい。

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