欧州議会はベルギーで現地時間12月14日,電気通信会社やISPに対して,ユーザーの通信記録の保存を義務づける指令案を可決した。データの保持期間は6カ月間から2年間。欧州議会は「犯罪者やテロリストの摘発に役立てる」としている。

 データ保持の対象となるのは,電話による通話,SMS(ショート・メッセージング・サービス),インターネット通信に関連したトラフィックや位置情報。また,発信して相手が出なかった場合のデータも保存しなければならない。通常,電気通信会社は請求対象となる通話のデータを記録するため,新たな技術の導入が必要になる。

 欧州議会によると,保持したデータへのアクセスが許可されるのは,テロリズムや組織的犯罪など,重大な刑事犯罪を発見,調査,摘発する場合に限られる。「データは,加盟国が認めた当局だけが利用し,あらゆる犯罪予防に使うわけではない」(欧州議会)。

 また当初草案には,データ保持のために発生する費用を,政府が全額払い戻すこと義務づける項目が含まれていたが,可決した指令案では削除された。米メディア(InfoWorld)によると,費用払い戻しは各加盟国の裁量にゆだねられるという。

 ちなみに同指令の可決を問う投票結果は,賛成378票,反対197票,棄権30票だった。

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