米Osterman Research社は,企業の電子メール管理に関して調査した結果を米国時間7月3日に発表した。その結果,多くの企業が電子メール保持義務の要件を満たしていないことが明らかになった。

 同調査は,北米において500~15万人の電子メール・ユーザーを抱える金融サービス,行政,生命科学などさまざまな業界に属する100を越える組織に対して実施した。調査は,Webベースのアンケートによって同年3月10~27日に行なわれた。

 「企業は,メッセージングに関連した多くの問題に直面している。メッセージを保存に要するスペースが急増し,ストレージ・コストも増加している。また,規制やその他の要件を満たすためにすべてのデータを保存しなければならないのは,非常に困難である。この調査結果は,メッセージ管理問題の現状とその解消方法を示すものである」(同社社長のMichael Osterman氏)

 回答した企業の89%が,電子メール通信の保持が義務付けられている金融サービスなどの業界に属していた。しかし,これらの規制を受けている企業の中で,法的に電子メールを最低期間保持することが義務付けられていると考えていたのは,29%だけだった。

 電子メールの保持に関するポリシーを用意しているのは,全体の57%だけだった。しかし,これらも規制の要件を満たすものではなかった。ポリシーのもと,もっとも長く保存されている電子メールは,平均して298日,およそ10カ月間であり,この平均保持期間は,SEC(米証券取引委員会)などの要求よりもかなり短い。OSHA(職業安全衛生法)では,さらに長い保持を義務付けている。

 また,多くの業界の規制では,情報を削除できない形式で保存することを要求しているが,調査対象の企業の半数以上が,長期的に保存しなければならないメッセージをユーザーが削除するのを防ぐための手段は講じていない。

 「規制を受ける企業が,適切な電子メール管理を怠った場合には,深刻な罰が科せられる。例えば,前年11月にSECは,電子メール通信の記録保持義務を怠ったとして,ウォール・ストリートの大手の証券会社5社を追求し,合計825万ドルの罰金が科せられている。しかし,同調査結果は,多くの企業が,同じような罰金と損失を受ける危険にさらされていることを示している」(同調査の共同スポンサーであるKVS社CEOのMike Hedger氏)

 同社によれば,法的な理由は別としても,包括的な保持ポリシーを持たない場合には,企業の経費と人件費に負担がかかるという。調査によれば,電子メールを保存する多くの企業が,特定の電子メールを迅速に検索する手段を持っていない。そのため,保存されている中でもっとも古い電子メールを取り出すのに,平均して1人の労働時間に換算して9.6時間も費やしているという。

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