調査内容 2008年第4四半期/2009年第1四半期/2009年度のIT予算の前年同期比増減(業種別)
調査時期 2008年12月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3229件(1207件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業の情報システム担当者を対象に行った2008年12月調査で,2008年第4四半期(2008年10月~12月)のIT予算の前年同期比(全業種平均は17.1%減,1月21日付け記事参照)を,製造,流通,サービスの業種別(下の「■調査概要」参照)に集計したところ,製造業は平均で22.2%減,サービス業も同19.4%減,流通業は同5.9%減だった。

 前回の2008年9月調査(2008年7月~9月四半期)は製造業が前年同期比6.5%減,サービス業は同8.2%減,流通業は同7.1%増だった。第4四半期は前期に比べて製造業が15.7ポイント,サービス業は11.2ポイント,流通業も13.1ポイントの大幅なダウンとなっている。

 なお図示していないが,「政府・自治体・公共」業種の回答者の前年同期比平均は,今回の2008年第4四半期は-6.7%(n=43)。前々回2008年6月調査(2008年4月~6月四半期)での+9.9%には及ばないが,前回調査の2008年第3四半期の-9.1%を2.4ポイント上回っている。民間部門が金融危機以後一斉にIT予算の削減に走ったのに対し,官公庁・自治体部門のIT投資は底堅いことを示す結果だ。

製造業はほぼ半数が「予算減」,15%が「予算ゼロ」

 回答の内訳を見ると,製造業は「前年同期比で(10%以上)予算減」とした回答者の合計比率が47.7%でほぼ半数を占めた。前回調査の2008年第3四半期と比較すると,「50%以上80%未満に削減(2割以上削減)」~「完全に削減(ゼロになった)」の部分が約18ポイント拡大,「90%以上110%以内(ほぼ前年同期なみ)」の部分の比率が約12ポイント減少している。

 サービス業は「110%超120%以内(2割以内の増加)」の比率が前回調査の2008年第3四半期より約4ポイント低下し,「50%未満に削減」が約4ポイント増加。流通業も「2割以内の増加」が8.5ポイント低下して,「50%以上80%未満(2割以上削減)」と「50%未満」がそれぞれ4ポイント拡大している。

 今回,「予算ゼロになった」の比率がサービス業で11.5%,製造業では15.0%の高率に達した。前回調査の記事でも触れたが,この「予算ゼロになった」の回答の比率が1割を超えたのは,前回調査(2008年第3四半期)のサービス業の10.9%と,2006年12月調査(2006年第4四半期)にサービス業で10.6%,流通業で12.5%の合計3例があるだけだ。

製造業は2009年第1四半期も前年同期比25%減,09年度は20%減

 図示していないが,今回の2008年12月調査では2009年第1四半期(2009年1月~3月)と2009年度(2009年4月~2010年3月期)のIT予算の前年同期比についても聞いた。全回答平均では,1月26日付け記事で紹介した2009年第1四半期予算が前年同期比18.6%減,1月29日付け記事で紹介した2009年度予算が前年同期比14.7%減である。

 これを業種別に集計したところ,製造業(2008年第4四半期は前年同期比平均22.2%減)は,2009年第1四半期が同25.2%減(n=141),2009年度が同20.5%減(n=128)。サービス業(2008年第4四半期は同19.4%減)は,2009年第1四半期が同17.2%減(n=185),2009年度が同14.8%減(n=171)。流通業(2008年第4四半期は同5.9%減)は,2009年第1四半期に同18.1%減(n=54)へ大きく低下,2009年度は同12.1%減(n=50)という結果だった。

 3業種とも2009年第1四半期は前年同期比2ケタのマイナスだが,製造業と流通業が2008年第4四半期よりも予算の減少率が拡大し,2009年度になって縮小に転じるのに対し,サービス業は2009年第1四半期から予算減少率が減り始める。「全体としては2009年第1四半期が前年同期比の予算カットのピークになるが,サービス業は2009年に入って一足早く峠を越えた」ことになる。

 ちなみに「政府・自治体・公共」業種のIT予算は,2009年第1四半期は前年同期比7.0%減(n=42)で2008年第4四半期とほぼ同じ,2009年度は同4.1%減(n=40)とさらに好転する。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち,予算執行・承認権限を持つ人を対象に,執行・承認の権限を持つシステム予算の総計の前年同期比を聞いた。
 新規購入や開発中の案件がなく、期間中のIT関連支出が継続運用費やリース料の支払い、減価償却費のみの場合、それらの総計額が属する範囲を選ぶよう求めた。外注の開発・運用要員の人件費は含めるが、自社内の開発・運用要員の人件費は含めない。
 本文中の「IT予算の前年同期比の平均」は,選択式回答(最も近いものを一つ選択)の「完全に削減」を-100%,「前年同期の50%未満にまで削減」を-75%,「50%以上80%未満にまで削減」を-35%,「80%以上90%未満」を-15%,「90%以上110%以内」を0%,「110%超120%以内」を+15%,「120%超150%以内」を+35%,「150%超200%以内」を+75%,「200%超」を+125%,「前年同期の予算はゼロ」を+200%に換算して加重平均した。
 「製造業」は「機械製造」,「コンピュータ,周辺機器製造」,「その他電気・電子機器製造」,「上記3種以外の製造業」を合計した。本文中の「政府・自治体・公共」は「政府/官公庁/自治体/団体」,「教育/研究機関」,「医療機関/介護施設」の合計である。
 「サービス業」は「サービス業(マスコミ,広告,デザイン,飲食店,その他)」,「専門サービス(弁護士/会計士など)」,「金融/証券/保険業」,「運輸/エネルギー」,「通信サービス」,「情報処理/ソフトウエア/SI・コンサルティング/VAR」の合計。
 「流通業」は「商社」,「コンピュータ関連販売」,「上記2種以外の流通/小売」の合計。なお本調査ではコンピュータ関連業種の回答者にも「自社の業務処理のためのIT投資」について回答することを求めた。
 なお,2006年9月調査(2006年7月~9月期)は「全社情報システム担当者」の回答のみだったのに対し,2006年12月調査(2006年10月~12月期)からは「部門/事業所/ワークグループ・レベルの情報システム担当者」の回答も含んでいる。
 調査実施時期は2008年12月中旬,調査全体の有効回答は3229件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1207件。

図●最新四半期(2008年10月~12月)予算総計の前年同期比増減率(回答者が執行・承認権限を持つ予算の総額,業種別)
図●最新四半期(2008年10月~12月)予算総計の前年同期比増減率(回答者が執行・承認権限を持つ予算の総額,業種別)