連載「対人交渉術の基礎」は、その名のとおり対人交渉における基礎的なスキルを取り上げたものだ。とはいえ、自分の主張を通すための表層的なテクニックだけを解説するものではない。著者の田村洋一氏が重視するのは、「安く買う」「高く売る」といったその場限りの有利な結果を得ることよりも、交渉結果が出た後、それがどんな世界につながるのかを思い描くことだ。

 連載では、「シナリオ思考」を応用した交渉状況の展望、ステイクホルダー分析に基づく利害関係者の全容を眺めながらの戦略立案、さらに対人交渉を円滑化する具体的な心構えや行動を取り上げながら、対人交渉を通じて、長期的なビジネスに役立つ、幅広く豊かな対人関係を構築していくスキルを解説する。

 著者は、対人交渉術を「単なる勝ち負けを超える創造的な営み」と定義する。その場その場の交渉結果に一喜一憂するのではなく、「相手を勝たせながら自分も勝つ」という奥義を学ぶために、同連載を振り返ってみてはどうだろうか。

対人交渉術の基礎