前回は、「初めに終わりを考えよ」ということを中心にお話ししました。

 「終わり」には、交渉ごとの望ましい結末と同時に、優れた交渉者としての自分自身の完成像がありました。つまり、対人交渉スキルをマスターし、高めていくにあたって、自分が目指すべきネゴシエーターはどのようなものか、最初にイメージを描いておこうということです。

 今日は、その全体像についてお話ししましょう。これは多くの方があまり聞いたことのない話になるかもしれません。

優れた交渉者としての自分自身

 まず、あらためて優れた交渉者としての自分自身を思い描いてください。皆さんは対人交渉スキルを駆使して何をしているのでしょうか。

<自分自身のビジョン>



 優れたコミュニケーションと交渉によって、仕事の世界がこれまでとは違う豊かな展開を見せていることを思い描いてください。自分の実現したいことが、自分自身の力だけではなく、多くの協力者を味方につけて現実のものになっていくことを想像してください。
 それは決して自分一人の力では実現できない世界です。しかし自分の意思と力によって周囲の人たちを巻き込み、周囲の人たちを幸せにしながら、自分が実現したかったことを実現しています。特定の交渉ごとの直接の成果を超えて、幅広く豊かな対人関係を構築し、動かしているビジョンを思い描いてください。自分自身を真ん中に置きながら周囲の世界がどのように変わっていくかを想像するのです。

 ここが出発点であり、同時に到達地点です。