「彼を知り己を知れば百戦危うからず」 孫子

 前回は「味方チャート」を使って交渉当事者と利害関係者の初期的なアセスメントを行いました。

 それが常に対人交渉コミュニケーションの扉を開く鍵になります。孫子に「彼を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉があります。ビジネスの交渉は戦争と違って相手を負かすことではないと前回述べました。相手を勝たせながら自分が勝つ。そのためにできることは何でしょうか。

「相手の靴を履く」こと

 英語に If I were in your shoes という表現があります。面白い表現ですね。「もし私があなたの立場だったなら」という意味です。「あなたの靴を履いていたなら」どのように感じ、どのように考え、どのように行動するのか。

 想像上のエクササイズです。重要な交渉相手の靴を履いてみましょう。少しの間でいいから、その人の立場に立ち、その人の気持ちになり、その人の頭と心の中に入ってみるのです。交渉の演技のけいこだと思ってやってみます。その人がどんな服を着て、どんな靴を履き、どんな身体の中にいて、どんな呼吸をしているのか、身体的にシミュレーションします。