ネットブックが引き起こしたパソコン市場の価格下落も影響し,米HP(Hewlett-Packard)や米Dellなどパソコン大手の業績は不振だった。各社は低迷するパソコン分野の収益悪化を補うべくモバイル分野への進出を図っている。一方で携帯世界最大手のNokiaはネットブックを発売してパソコン市場に参入すると発表。MicrosoftはそのNokiaと提携してモバイル分野で「Office」の拡販を図る。不況下に新たな市場を求め模索を続ける大手各社だが,この8月,唯一華やかな話題が多かった企業がある。米Appleだ。
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米NPD Groupが発表した音楽小売り販売の調査では,今年上半期に米国で最も多く楽曲を販売したのはAppleの「iTunes Store」で,同社のシェアはCDの販売も含めて全体の25%に達した。また大手調査会社Gartnerの調査結果によれば,4~6月期の「iPhone」の販売台数は543万4700台で,同四半期のスマートフォン市場におけるAppleのシェアは13.3%。世界第2位のカナダRIM(Research In Motion)に猛追している(Gartnerの発表資料)。米ミシガン大学ビジネススクールの顧客満足度指数では,Appleがパソコン分野で6年連続の首位に輝いた。そして同社が8月28日に販売開始したばかりの最新OS「Snow Leopard」の出足も好調だ。
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Appleという会社は今どうなっているか?
09年4~6月期の製品別売上比率を見てみよう。現在,Appleのパソコン売り上げの全売上高に占める割合は4割程度で,同社の売上高のほぼ半分はiPhoneとiPod,音楽などの関連サービスで占めている。残りの1割はソフトウエアや周辺機器などだ。つまり同社は今その半分がパソコンやサーバーといった従来のコンピュータ事業,残り半分がiPhoneやiPodなどの新規事業で成り立っているのだ(図1)。

パソコン市場の低迷が続くなか,今のAppleはこの新規事業で強みを見せている。とりわけiPhoneは成長著しく,今やデスクトップやサーバー製品を大きく上回りiPodと並ぶ2大ガジェット製品になっている。iPhoneは2代目の「3G」を発売した直後から急速に伸びた。今はかつての2倍以上,四半期ベースで平均500万台を出荷するまでに成長している(図2)。

Appleの発表資料によると,4~6月期では520万台のiPhoneを出荷しているが,3代目iPhoneの「3GS」を発売したのは6月下旬のことだ。つまり同四半期の業績報告には新端末の実績は一部しか反映されいない。今期(7~9月期)の出荷台数はさらに伸びているだろう。
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