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 日本テレコムの「おとくライン」やKDDIの「メタルプラス」,平成電電の「CHOKKA」といった直収電話は,テレビCMなどを使った派手な宣伝合戦のせいもあり,一般家庭向けのイメージが色濃い。その影に隠れがちだが,もちろん企業でも利用できる。事業者各社は事業所向けのメニューを用意するほか,日本テレコムと平成電電はISDNサービスも提供している。NTT東西地域会社の「INSネット64/1500」に相当するメニューとして,日本テレコムは「おとくライン ISDN64/1500」,平成電電は「CHOKKA デジタル64/1500」をラインアップにそろえる。

基本料が破格の法人向けサービスもある

 各社の直収ISDNもやはり安さが売り。日本テレコムの「ISDN1500」は基本料が4万3050円(回線使用料,屋内配線使用料,DSUレンタル料の合計)。平成電電の「デジタル1500」は同3万1458円(回線使用料,配線保守料の合計,同社指定のDSUを別途購入する必要がある)である。東西NTTのINSネット1500は月額4万7250円(回線使用料,屋内配線使用料,機器使用料の合計)なので,かなり割安といえる。

 このほか,平成電電は基本料をさらに安くした「ビルCHOKKA」と呼ぶサービスを提供予定である。ビルCHOKKAでは,東西NTTの交換局に設置する集線装置を,ビルやマンションなどの建物内に置き,ダーク・ファイバで接続。1本の光ファイバをビル内の複数ユーザーで共有することで,低価格化を実現する。ビル内に設置した集線装置からユーザー宅までをメタル回線で接続する場合の基本料は,法人向けで1680円と破格の安さだ。

企業ユーザーの導入も始まった

写真1
写真1●KDDIの事業所向け電話サービスのパンフレット

 KDDIの「メタルプラス」は現時点でISDNに未対応だが,法人向けには東西NTTのダーク・ファイバを利用した「KDDI光ダイレクト」を提供している(写真1)。KDDI光ダイレクトの基本料は,8チャネルで月額2万1000円から。1チャネルに換算すると2625円になり,東西NTTのアナログ電話の基本料と同じ(3級局,事業所向けの場合)。ただし,KDDI光ダイレクトは,追加1チャネル当たり月額1260円で最大1000チャネルまで増やせる。利用するチャネル数が多くなるほど,割安になる。さらに,KDDI光ダイレクトやメタルプラス(事業所用),KDDI-IP電話の加入者への通話料も無料とする(ただし,メタルプラスからKDDI光ダイレクトへの通話が無料になるのは「事業者間定額かけ放題」を利用した場合のみ)。

 既に王子製紙が本社ビルにKDDI光ダイレクトを導入しており,年間数千万円かかっていた電話料金を半減できる見込みである。導入を担当した王子ビジネスセンター企画部の阿部崇マネージャーは「既存の電話番号がそのまま使える上に,新たな設備投資も不要。それで電話料金を半減できるのだから嘘みたいな話」と喜びを隠さない。今後,約60ある関連会社にもKDDI光ダイレクトやメタルプラスを導入し,内線電話の代わりにも活用していく予定である(関連記事)。

ダーク・ファイバではNTTコムも参入

 ダーク・ファイバを使った直収電話は,実はNTTコミュニケーションズ(NTTコム)も提供している。「NTTグループとして加入者網には2重投資しない」という方針で,NTTコムはドライ・カッパーを利用した直収電話には参入していないが,ダーク・ファイバを利用して密かに「VoIQフラットプラン」と呼ぶサービスを提供している。同社のホームページには紹介されていない。その理由は「ユーザー企業のニーズに応じて提供するソリューション・サービスだから」(NTTコム)と説明する。

 ユーザー企業に対して主に提案しているプランは,基本料が10チャネルで月額1万7850円というもの。これに加え,62.5時間分の通話料を含んだ定額料が別途1万500円かかる。超過した場合の通話料は全国一律3分8.4円。ユーザー企業ごとの個別契約になるので,「10チャネル以外の提案もあり得る。アクセス回線は,OCNやArcstar IP-VPN,e-VLANなどとの併用にも対応可能」(同社)としている。

完全な置き換えは難しく,当面は併用が中心

 では,ダーク・ファイバを使った直収電話サービスは,NTTの事業所向け電話サービスを置き換えることができるのか。

 まずダーク・ファイバを使った直収電話でも,特定電話番号に発信できない制限がある。例えば「KDDI光ダイレクト」は,警察(110番)や消防(119番)などの緊急特番に発信できない。これでは不都合なので,NTT電話を一部残すケースが多い。発信先の電話番号に応じ,PBX(構内交換機)で利用する回線を振り分ける。前述した王子製紙も,この方法で対処している。

 発信制限に加え,着信転送やダイヤルインなど提供している付加サービスの違いもある。提供する付加サービスの種類は,NTT電話よりも少ない。こうした制約は徐々に解決されると思われるが,容易なことではない。発信可能先を増やすには,事業者が個々の接続先と相互接続の手続きをしなければならないからだ。付加サービスの追加も交換機やソフトスイッチなどの改修が必要になるので,時間と手間がかかる。

 ダーク・ファイバを用いた直収電話も,当面はNTT電話との併用が中心になりそうだ。

【集中連載・NTT電話は捨てられるか】特集ページはこちらをご覧下さい。

【集中連載・NTT電話は捨てられるか】記事一覧
●(1) NTT電話とはここが違う,使い方によっては大幅安
●(2) ADSLが選べなくなる,直収電話への移行の最大の壁
●(3) 巻き返すNTTグループ,マイライン戦線に異常あり
●(4) 光ファイバ直収もある,企業ユーザーは見逃すな
●(5) 直収の未来は大ブレイクかニッチのままか