王子製紙は,本社ビルにKDDIの直収電話サービス「KDDI光ダイレクト」を導入した。これまで年間数千万円かかっていた電話料金を半減できる見込みだ。導入を担当した王子ビジネスセンター 企画部の阿部崇マネージャーは「既存の電話番号がそのまま使える上に,新たな設備投資も不要。それでも電話料金を半減できた」と語る。

 同社では今回の移行に伴い,契約回線数を見直した。本社ビルに移転してきた関連会社が移転前の電話番号を使い続けていたため,「電話番号を過剰に持っていた」(阿部マネージャー)からだ。光ダイレクトは,番号ポータビリティの仕組みを使って既存の電話番号を利用したまま移行できる。導入前は数百チャネルあった電話/ISDN回線を半分弱に減らして基本料を大幅に削減しつつ,既存の電話番号を使い続けられる。携帯電話など光ダイレクトによる割り引き効果の大きい通話が多いこともあり,試算では電話料金を約50%削減できるとみている。基本料と通話料を合わせた電話料金は約半額となった。

 導入にかかった費用はPBXの設定変更などの約300万円。光ダイレクトは,警察(110)や消防(119)など特定の電話番号に対して発信できない制限がある。そのため,NTT東日本の加入電話/ISDN回線を一部残し,発信先の電話番号によって回線を振り分ける処理をPBX(構内交換機)で実施する必要があった。

 今後,約60社ある関連会社にも直収電話を導入していく。本社と違って基本料の削減がないので平均すると20%程度のコスト削減にとどまる見込み。ただし,関連会社は外線のコスト削減よりも,むしろ内線網の代わりを期待する。KDDIは,光ダイレクトやメタルプラスなどの加入者間通話が無料になる「事業者間定額かけ放題」というサービスを提供している。これを活用することで,さらにコストを削減する予定である。