フランスThomsonの一部門であるThomson Scientificが,科学分野の研究活動に関する調査結果を米国と英国で現地時間7月28日に発表した。それによると,この20年間で米国研究者の書く論文の割合が徐々に減り,欧州連合(EU)諸国とアジア太平洋地域の研究者による比率が増えているという。

 調査は,National Science Indicators文献データベースを使用し,8700誌以上の科学雑誌から引用データを集めて実施した。調査対象の研究分野は,農業科学,化学,工学,材料科学,物理学の5つ。

 1981年時点では,全世界の論文数17万2132件のうち,米国が39.7%,EUが32.3%,アジア太平洋地域が13%を占めていた。2004年には,総数29万2067件で,EUが38%,米国が33.3%,アジア太平洋地域が25.3%となった。

 1990年代中盤に米国とEUの順位が逆転し,現在EUが米国を5ポイント弱上回っている。アジア太平洋地域は件数ベースのシェアを約12ポイント増やし,「このペースが続くと2011年には米国を上回る」(同社)。

 ただしThomson社Thomson Scientific部門主任研究員のHenry Small氏は,「各国の件数ベース・シェアは変動するが,全体の論文数は増えているので,この点に注意することが大切」と指摘する。「この調査結果から,米国で研究者が不足していると結論づけるのは難しい」(同氏)

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