米Pew Internet & American Life Projectは,米国のアーティストを対象としたインターネットに関する意識調査の結果を,米国時間12月5日に発表した。それによると,米国のアーティストは,著作権侵害や違法なファイル交換といった弊害はあるものの,制作,宣伝,販売に活用するなど,インターネットの恩恵を受けていることが分かった。

 調査は,ミュージシャン,映画製作者,写真家など,米国のアーティスト2755人を対象にオンラインでアンケートを実施したもの。

 インターネットを利用するアーティストの割合は77%で,米国一般人口の割合である63%を上回った。インターネットの利用法だが,「アイデアやインスピレーションを得る」というアーティストが52%,「作品を制作/配布する」アーティストは30%だった。また,アーティストの23%が,「インターネットは創作活動やキャリアに役立った」と回答した。

 また調査から,アーティストの大半は,現行の著作権法におおむね満足していることが分かった。現行の著作権法で作品が保護されるのは,アーティストが生存中とその死後70年間である。

 ファイル交換を大きな脅威とみなすアーティストは28%だった。音楽や映画など,ピア・ツー・ピア(PtoP)ネットワークを介した無許可のファイル交換に関しては,「違法とすべき」というアーティストが52%,「合法とすべき」というアーティストが37%だった。

 米レコード協会(RIAA:Recording Industry Association of America)が,著作権所有物のPtoPファイル交換を行った個人を訴えていることについては,「ファイル交換ネットワークを所有/運営している企業の責任を問うべき」と考えるアーティストが約3分の2に達した。また,「ファイル交換を行った個人を訴えるべき」とするアーティストと,「両方を訴えるべき」と考えるアーティストは,いずれも15%だった。

 ファイル共有の最終的な是非に関しては,意見がほぼ二分した。47%が,「アーティストの許可なく,もしくはアーティストを補償することなく,作品を複製/使用できるファイル交換は,アーティストにとって良くない存在」と考えている。一方,「アーティストの作品を広く普及,配布できるファイル共有は,まんざら悪くない存在」とするアーティストは43%だった。

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