米Microsoft，開発者向け会議で「Visual Studio」「SQL Server」の新版を紹介

和田英一

2003.10.29

　米Microsoftが開発者向け会議Microsoft Professional Developers Conference（PDC）2003で米国時間10月28日に，アプリケーション開発ツール「Visual Studio」の新版（開発コード名はWhidbey）と，データベース・サーバー・ソフトウエア「SQL Server」の新版（同Yukon）の詳細にするとともに，同会議の出席者に両製品のプレリリース版を配布した。

　Whidbeyは，Visual Studioおよび「.NET Framework」用の開発ツール。小規模なWeb／クライアント・アプリケーションやモバイル・アプリケーション，大規模なサービス指向アプリケーションなどの設計／構築を，従来よりも容易に行えるという。おもな特徴は以下の通り。

・Whitehorse（開発コード名）と呼ばれるツール・セットを備え，サービス指向アプリケーションと運用インフラを同時に設計できる。XML対応Webサービスとの接続を行う部分の設計は，ドラッグ＆ドロップで行える。開発したアプリケーションを実際の運用環境上で検証する作業にはSystem Definition Model（SDM）を使うので，時間と費用の節約になるという。

・アプリケーション開発を迅速化する“edit-and-continue”技術や，さまざまな共通タスクを抽象化する機能，Common Language Runtime（CLR）の導入など，一連の言語機能を採用して，開発者の生産性向上を図ったという。さらにドラッグ＆ドロップ操作を可能としたことで，「Visual Basic .NETによるデータ中心のアプリケーション開発が容易になった」（同社）

・サービスとコントロールを導入し，共通シナリオのコード量を最大70％削減する。ASP.NETの強化を図り，Webサイトのテーマやマスター・ページの作成に対応した。「Webサイトのルック＆フィールの一貫性を保ちやすくなり，Webアプリケーションの管理と展開が簡単に行えるようになる」（同社）

・Whidbey版.NET Frameworkは64ビット・プロセサ対応を強化した。また「ClickOnce」（開発コード名）と呼ばれる新技術により，アプリケーションのインストール，アップデート，旧バージョンへのロール・バックが容易になる。

　一方，Yukonは「SQL Server 2000」ベースのソフトウエアで，データベース開発用の総合的なツールを提供する。XML対応としたほか，.NET Framework技術や同社の開発ツールとの統合を強化している。以下に示す機能強化により，「Yukonは開発者の生産性を大きく向上すると同時に，複雑さを減らしつつ柔軟性を高める」（同社）

・データベース・エンジンでCLRの利用が可能となった。そのほかの対応言語は，Transact-SQL，Visual Basic .NET，Visual C# .NET。

・XQueryやXMLなどに対応したことで，ネイティブXMLデータタイプを利用できる。そのほかに，HTTP，SOAP，XML Schema Definition（XSD）といった標準仕様にも対応している。

・Transact-SQL，XML，Multidimensional Expression（MDX），XML for Analysis（XML／A）用の単一開発ツールを提供する。YukonをVisual Studioと統合したことで，「開発，デバッグ作業の効率が高まる」（同社）

　WhidbeyとYukonのベータ版は，2004年に同社の開発者向けサービス「MSDN Universal」の会員に提供する予定。

　また同社は同日PDCにおいて，モバイル・アプリケーション開発用の新プラットフォームについての発表も行った。その内容は以下の通り。

・「Tablet PC SDK」のアップデート：
　Tablet PC SDK 1.7のアルファ版では，Web上で手書き文字を入力する機能に対応した。そのほかには，文脈を利用して手書き文字を認識する機能と，リアルタイム・スタイラス機能を追加している。

・「Windows Mobile Smartphone Device Developer Kit」の次版：
　「Windows Mobile for Smartphone 2003」の最新版を同梱し，「Visual Studio .NET. Windows Mobile for Smartphone 2003」「Pocket PC 2003」との統合を強化した。詳細はWWWサイトに掲載している。

・「Mobile2Market」プログラムのアップデート：
　アプリケーション・ロゴ認定などを通じ，開発者を支援する。詳細はWebサイトに掲載している。