金融関連のデジタル技術を研究開発するコンソーシアムFinancial Services Technology Consortium(FSTC)が,現金管理システムの統合にWebサービスを適用する場合の注意点などを洗い出すプロジェクトを実施し,米国時間9月26日に結果を発表した。FSTCは,「インタフェース・レベルで,(Webサービスは)相互接続性や安全性がまだ足りない」と結論付けた。
この検証作業には,米Bank of America,米JPMorgan Chase,米Wachovia,NECおよび同社のコンサルティング事業である米Niteo Partners,米Sun Microsystemsが協力した。この活動について,FSTCは「銀行同士および銀行と顧客間向けの現金管理アプリケーションやデータ統合に関し,Webサービス技術の有効性を検証する」としている。
FSTCと各社は,資金管理を行う目的で複数銀行間の報告サービスにWebサービスを適用する状況を想定して相互接続性,安全性,信頼性を調査し,Webサービスの有用性を示す参照実装や次世代資金ポータルといった一連の情報を公開した。
「当プロジェクトの第1段階として,インタフェース・レベルの相互接続性が不十分と判断した。また自動生成させたコードに大量のバグが含まれていたため,複数のオープン・ソースおよび商用技術でWSDLファイルを使うことが問題となった」(FSTC)
さらにFSTCは,「安全性に関するの相互接続性が極めて不足しており,銀行用アプリケーションで使うには慎重な検証が必要」と指摘する。「XML対応の電子署名や暗号化パッケージを多種多様な技術プラットフォーム間で利用するのは困難だった」(FSTC)
そのほかの主な調査結果は以下の通り。
・検証作業の過程で作成した参照実装には,実務で使える再利用可能なアーキテクチャと一連の技術仕様を含む。基本的なWebサービスとして活用できるだけでなく,.NETやJava環境で銀行用アプリケーションを計画,開発する際に参考となる技術的/実務的な文書としても利用できる。
・検証作業を行ったことで,技術標準と相互接続性についてさらに技術開発を進める必要のあることが判明した。特にアプリケーションと銀行間のやり取りにおいて,要求されるサービス・レベルを満足するには,エンド・ツー・エンドの安全性と信頼性が欠かせない。
・SOAPを使ってXML形式以外のデータの添付や転送などを行うには,さらに業界のなかで検討を進める必要がある。
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