米SCO Groupは,米IBMにUNIX系OS「Dynix/ptx」のライセンス取り消しを米国時間8月12日,通達した。Dynix/ptxは,IBM社が買収したSequent Computer Systems社の製品。SCO社はSequent社と「UNIX System V」ソフトウエアに関するライセンス契約を結んでいたが,「Sequent社がUNIXのソース・コードと開発手法を不当にLinuxに流用した」(SCO社)として,今回ライセンスの失効を言い渡した。

 SCO社によると,同社がSequent社と交わした契約では,「Sequent社はUNIX System Vソフトウエアに変更を加えて派生品を開発してもよいが,それによって作成したものは,オリジナルのSystem Vソフトウエアの一部として扱わなければならない」という。オリジナルのSystem Vソフトウエアを使用する際の制約には,機密保持をはじめ,所有権委譲の禁止や第三者への開示禁止が含まれる。

 SCO社は「Sequent社とIBM社が,Sequent社製UNIXのコードの約148ファイルをLinuxの2.4および2.5カーネルに流用し,それまでLinuxに不足していたNUMAやRCUマルチプロセサ・コードを補った。さらに,UNIXベースの開発手法をLinuxに利用した」と主張している。

 SCO社は2カ月前にSequent社とIBM社へライセンス失効を予告したが,「IBM社がまったく事態の解決に乗り出さなかったため」(SCO社)今回の行動に踏み切ったという。ちなみにSCO社は6月16日に,IBM社のUNIX系OS「AIX」の利用および販売ライセンスの取り消しを発表している。

 SCO社は今年3月に「IBM社がLinux事業を推進するためにUNIXソフトウエアのライセンスを不正利用した」として,IBM社を提訴し,「Linuxの使用に関する法的責任が商用ユーザーにまで及ぶ可能性がある」との警告をLinuxベンダーやユーザー各社に送付した。7月21日にはLinuxユーザーに向けに「Linux利用の合法性を認める」ライセンス・プランを発表した。同ライセンスを購入しない企業に対しては,訴訟の可能性を示唆している。

 SCO社は8月11日,同ライセンスに関して,Fortune 500企業の1社と初の契約を締結したことを明らかにした。企業名と詳細な条件については明らかにしていないが,「契約を結んだその企業は事業に使用している各サーバー用にラインセスを購入した」(SCO社)という。

 またSCO社は8月14日,2003会計年度第3四半期(2003年5~7月期)の決算を発表した。売上高は2010万ドルで,前年同期の1540万ドルから増加。純利益は310万ドル(希薄化後の1株当たり利益は19セント)で,前年同期の純損失450万ドル(希薄化後の1株当たり損失は35セント)から黒字に回復した。当期売上高の内訳は,OS事業の収入が1280万ドル,UNIX関連の知的財産権を管理するSCOsource事業の収入が730万ドルで,「ともに事前の予測範囲通り」(SCO社)。

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