「2002年におけるIT市場の売上高は前年比2.3%減の8750億ドルで,最も大幅な落ち込みをみせた。しかし市場は底を打った感があり,2003年は5%以上の成長率を実現するだろう」。米IDCは米国時間11月20日,2002年における世界IT市場と今後の展望について調査した結果を発表した。

 IDCチーフ・リサーチ・オフィサのJohn Gantz氏は,「IT市場全体が過去2年間で約3%縮小した。同市場が過去20年間,年平均12%で成長していたことを考えると非常に大きな落ち込みといえる」と説明した。「しかし2003年は,ITと通信分野の支出が回復し,世界IT市場は約5.8%成長する」(同氏)と,楽観的な見通しも明らかにした。

 2002年にIT市場が減退した理由はいくつかある。まず,パソコン,サーバー,ワークステーションを含むシステム分野が,前年と比べ9.3%も落ち込んだ。またストレージ分野も,前年比10.6%減と大きく縮小。同分野が2001年のレベルまで回復するのは,2006年を過ぎたあとになる見通しだ。ネットワーク機器分野では,電気通信サービス・プロバイダによる売り上げ激減したことから,前年比7.6%減となった。そして,現在IT市場において売上高合計の3分の1以上を占めるサービス分野も,平均的な契約金額が3年連続で減少ている。

 IDCは,IT支出が2003年から回復基調に向かうと予測しているが,「過剰に期待を寄せるのは禁物」と警告する。ソフトウエア分野では低調が続いており,ハードウエア分野も価格競争が激化していることから売上高の伸びは制限される。また,サービス分野でも小規模プロジェクトが大部分を占めることが予測され,売上高の大幅な回復は見込めない。なお,2003年を過ぎるとしばらく順調に回復が進み,今後10年以内には成長のペースが緩やかになる見通しだ。

 またIDCは,イラクにおける戦争の長期化や株式市場の暴落など,経済的および政治的要素が,IT市場の成長に悪影響を与える可能性を指摘した。そのような外的要素を考慮した“悲観的シナリオ”を想定した場合,「2003年における世界IT市場の成長率は約2%にとどまる。またそれ以降は,GDP(国内総生産)の伸びとほぼ足並みを揃えて成長する」(同社)。

 一方,市場を楽観視して地域別にみると,2003年に米国のIT支出は4.4%増加する。サーバー,セキュリティ,ネットワーク機器の需要回復が市場をけん引する。ソフトウエアが堅調な伸びをみせるのは2005年以降。パソコンによる売上高は2004年以降に再び下り坂となる。

 欧州のIT支出は2003年に5.4%増となり,その後数年間,着実に増加する。日本は米国と同程度の伸びをみせ,その他のアジア太平洋地域はそれを上回る成長を実現する。中南米は,2003年に8.7%増加し,その後2006年まで2けた成長となる。

◎関連記事
2002年のIT市場は緩やかに回復へ,中国のWTO加盟やセキュリティ製品/サービスがけん引
IT業界の期待ははかない夢に。年内の需要回復は実現せず
「電気通信サービス世界市場にようやく明るい兆し,2003年の市場は1兆2000億ドル超規模」,と米IDC
米IDC,2002年世界ITサービス市場の成長率を10.6%から6.7%に下方修正
「2002年Q3の世界サーバー市場は3.1%増,しかし明るい見通しを立てるには時期尚早」,米データクエスト
「2002年Q3の世界サーバー市場は50億ドル規模,2001年初頭以来初めてのプラス成長」,と米IDC
「2001年のソフト世界市場,成長率が昨年の半分以下に」と米データクエスト
パッケージ・ソフトの世界市場は2003年から回復,2006年まで年平均10~12%で成長

[発表資料へ]