米IBMは,ワシントンDC地域の緊急時公共安全データ・ネットワークを構築する契約を獲得した。IBM社がバージニア州,メリーランド州,コロンビア特別区の公安局および輸送局とともに,米国時間8月22日に発表したもの。複数の州の行政管轄区を結ぶ,「初めての相互接続性のある無線システム」(IBM社)となる。40の地方,州,連邦機関の公務員がリアルタイムでやりとりできるようにする。

 IBM社が構築するネットワークは「Capital Wireless Integrated Network(CapWIN)」。消防士,警察官,交通機関の職員,救急隊員などは,緊急事態に直面した際,行政機関の各種データ・ソースに無線でアクセスできる。「情報へのアクセスが向上することで,通報者や公安職員が的確な決断を下せるようになる。相互接続性の低い通信機器や不十分な情報による混乱を排除する」(IBM社)

 バージニア州共和党上院議員のGeorge Allen氏は,「我々が2001年9月11日の同時多発テロ事件から学んだ重大な事柄の一つは,通報者との通信をよりスムーズに行い,異なる管轄区やシステムとのやりとりを効率化する必要があるということ。米国会は,こうした通信の相互接続性を実現するために膨大な予算をつぎ込むことを決定した」と説明した。

 CapWINでは,同一の事件に対して複数の機関が優れた管理と協調に努め,職員どうしがネットワーク上でやりとりできるようにする。パソコン,PDA,データ対応携帯電話機などに搭載したインスタント・メッセージング・アプリケーションを用いる。

 認証を受けたユーザーは,アクセス制限のある高性能のチャット・ルームを,自然災害,衝突事故,火災,テロなどへの対処に役立てることができる。例えば交通事故の場合,警察官が救急車の運転手,消防士,交通機関の緊急対応部門といった複数の相手に同時に連絡をとることが可能。

 また,犯罪捜査などを目的とした長期的なグループを結成して,ネットワークで連絡を取り合うこともできる。

 その他のCapWINの特徴として,ワシントンDC,メリーランド州,バージニア州の管轄区にまたがってデータにアクセスすることが可能。IBM社は業界標準の技術を使って従来のシステムを接続する。そのため,「関連する行政機関の既存の情報および通信システムへの影響はごくわずか」(IBM社)だという。

 IBM社はCapWIN構築に,クラスタ接続したUNIXサーバーeServer pSeriesやWebSphereソフトウエアを組み合わせたソリューション「First-Responder Interoperability Solution」を用いる。米連邦捜査局(FBI)のモバイル・データ通信用基準に達したセキュリティ機能を備える。

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