米Cryptography Researchが米国時間8月7日に,「『ムーアの法則』にはコンピューティング・システムをますますぜい弱にするというデメリットがある」などとする意見を発表した。

 ムーアの法則とは,米Intelの共同設立者であるGordon E. Moore氏が経験則として提唱した法則で,「半導体のトランジスタ数は18カ月で倍増する」というもの。

 Cryptography Research社社長のPaul Kocher氏は,「ムーアの法則が言い表している急激なコンピューティング速度の向上により,システムはますます複雑化している。システムが複雑になるほど,攻撃の手段や機会が増える」と指摘する。「安全なシステムをどのように設計するか,今こそ考え直すべき時だ」(Kocher氏)

 「ムーアの法則と,競争力強化という企業使命に追われ,ベンダーは指数関数的に複雑さを増すシステムを構築している。しかし,セキュリティ専門家はそれについていけない。部品や回線が倍増すれば,相互的な影響は4倍に増える。そうなれば,セキュリティの欠陥を避けることや検出することはいっそう難しくなる」(Kocher氏)

 また,セキュリティ仕様自体も複雑化しているため,時にはシステム全体を把握している人が1人もいないといった場合がある。Kocher氏は,「システムが速くなればなるほど暗号化の威力も増す,という概念があるが,これは単純な力まかせの攻撃に対して言えることだ。攻撃者は設計や実装の欠陥を利用してシステムに侵入してくるのである」と述べた。

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