米Lucent Technologiesの米Bell Labs(ベル研究所)が,単一分子サイズのチャネル長を持つ有機トランジスタを開発した。Lucent社が米国時間10月17日に明らかにしたもの。これにより,高速なトランジスタを,安価な炭素化合物で作成できるようになるという。
この研究の詳細は,英国の科学雑誌「Nature」の10月18日号に掲載するという。
ベル研は,チオールと呼ばれる炭素化合物の有機半導体材料を使い,従来のシリコン・トランジスタと同等の性能を持つ分子サイズのトランジスタを作成することに成功した。
砂粒のおよそ100万分の1の大きさしかない極小トランジスタを使用し,インバータ回路を作成したという。
「これは試作品に過ぎない。しかし簡単な回路の組み立てに成功したことは,分子サイズのトランジスタをマイクロプロセサやメモリ・チップに利用し,現在の数千倍のトランジスタを一つのLSIに押し込められることを意味している」(ベル研)。
分子サイズのトランジスタを作成する上で大きな問題は,わずか分子数個分の間隔の電極を作ることにある。ベル研の研究者は,自己組織化手法を使い一つの電極を複数のトランジスタで共有することでこの問題を解決した。具体的には,「一つの電極上に有機分子の層を自己組織化し,その上にニつ目の電極を配置した」という(ベル研)。
自己組織化手法はトランジスタのチャネル長を小さくするための“鍵”となる技術であるという。この実験で作成したトランジスタのチャネル長は1nmから2nmだった。自己組織化手法は比較的簡単でコスト安という特徴をもつ。
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