英ARMは米国時間4月29日に,カリフォルニア州サンノゼで開催されたEmbedded Processor Forumの会場で,「ARM11」マイクロアーキテクチャを発表した。次世代の無線機器や消費者用機器に向ける。同アーキテクチャの目標とするドライストンMIPS値は,400から1200。省電力動作に対応し,バッテリで動作する高密度な組み込み用途に見合う価格になるという。

 ARM11マイクロアーキテクチャは,ARM社が2001年10月17日に発表した「ARMv6」命令セット・アーキテクチャを初めて実装する。「高い性能と低い電力消費が求められる2.5/3世代携帯電話機,PDA,マルチメディア無線機器,画像処理向け家電品などに最適」(ARM社)。さらに,VoIPやブロードバンド・モデムといった家庭用ネットワーク・インフラ機器で必要とされる条件にも合致するという。

 ARM11マイクロアーキテクチャには,オブジェクト・コード効率を向上する「Thumb」拡張,Javaの動作を高速化するJava対応拡張命令セット「Jazelle」技術,ARM DSP拡張,Single Instruction Multiple Data(SIMD)メディア処理拡張などを実装する。「8ステージの整数パイプライン,静的/動的分岐予測,ロードとストアの分離,命令のスループットを最大にする演算パイプラインを導入することで,高い性能を実現できる」(同社)

 同アーキテクチャを0.13μmプロセスで製造した場合,動作周波数は最悪でも350MHzから500MHz強になり,次世代の0.1μmプロセスでは1GHzを超えるという。消費電力は,0.13μmプロセスで0.4mW/MHz以下になる。

 ベクター化割り込みと,割り込み待ち時間の短い動作モードを使うことで,リアルタイム実行性能が強化されたという。これには,「ARMv6アーキテクチャで,割り込み待ち時間のオーバヘッドを70%削減したことも貢献している」(同社)という。

 なおARM11マイクロアーキテクチャの開発には,Microsoft PocketPC,Symbian OS,Palm OS,Linuxを手がける複数のOSベンダーが協力したという。

 ARM11アーキテクチャを採用したCPUの発表とライセンシへのリリースは,2002年第4四半期を予定する。

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