欧州連合(European Union)は現地時間8月30日に,米MicrosoftのWindows OSやMedia Playerが欧州の定める独占禁止法に抵触している可能性が高いとの判断を改めて下し,欧州委員会(EC:European Commision)が同社に対し通告したことを明らかにした。

 ECは同日,Microsoft社の主張を退ける声明「Statement of Objection」を発表した。ECは,声明のなかで,「Microsoft社はローエンド・サーバー・ソフト市場において,違法な手段によりWindows 2000の独占的地位をさらに拡大しようとしている」と指摘している。

 「すでに広く普及しているWindows OSベースのパソコンやサーバーと,他社のサーバー・ソフトを搭載するシステムとの間に相互運用性を確保するためには,Microsoft社がインタフェースなど技術的な情報を提供しなければならない。情報が提供されていない現状では,Microsoft社の技術的な問題が理由で,競合製品が市場で受け入れらていないという結果を招いているということになる」(EC)。

 またMedia Playerについても,広く普及しているWindows OSに組み込むことで,パソコン・ベンダーや消費者の選択の自由を奪おうとしていると指摘した。

 Microsoft社は同日,「現在Statement of Objectionの内容を確認中」としながらも,「当社の事業は欧州連合(EU:European Union)が定める法律に則って運営されていると確信している」(Jean Pholippe Courtois氏)との立場を改めて明らかにした。「当社の製品は他のベンダーの製品との互換性をすでに十分確保している」(Microsoft社)。

 ECは引き続き調査を継続する。Microsoft社はこの「Statement of Objection」に対し,2カ月以内に回答を行う。

 ECは2000年8月3日にも同様の内容で「State of Objection」を通告している。State of Objectionはこれで2度め。「今回の声明によりMicrosoft社に対して改めて懸念を表明,これまでの立場をさらにもう一歩推し進める」(EU)としている。

 欧州におけるMicrosoft社の独禁法訴訟については,すでにWindows 98を対象とした同様の訴訟が起こされている。ECは同日,この2件の訴訟の内容が類似しているとして一つにまとめることも明らかにした。Microsoft社はこれを了承する声明を同日発表した。

 また,Microsoft社は声明のなかで,「ECの委員との会談により,Windows XPやその他のMicrosoft社製品がEUから販売を差し止められる可能性はないことが確認された」(同社)と発表している。

 ソフトウエアの業界団体,Software & Information Industry Association(SIIA)は同日,「ECの判断は,Microsoft社の事業が独占禁止法に抵触していることを確認するもの」として,これを歓迎する声明を発表した。SIIAは,ライバルの米Sun Microsystems,米AOL Time Warner,米Oracleなどが立ち上げた業界団体。

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