3Dモデリング

 3Dプリンターの利用が広がる中、その入力データである3Dデータを作成する工程への注目も高まってきている。インターネット上での3Dデータ公開や、簡単に3Dデータを作成できるWebアプリの登場などが進んでいるが、その一方で手元のパソコンで3Dデータを自由に造りたいというニーズも少なくない。

 例えば、ムトーエンジニアリングは、簡易的なモデリングツールを3Dプリンターとのバンドルで販売するなど、3Dプリンターメーカー側での対応も進む。片や、米SpaceClaim社の3D-CAD「SpaceClaim 2014 SP1」が3Dプリンター用に「STL編集モジュール」をオプションで用意したように、モデリングツール側での3Dプリンター対応も進んでいる。

STLデータを最適化

 アンドール(本社東京)は、3Dプリンター用のデータ作成用途に向けたポリゴン編集ツール「STL工房」を出展した(図9)*8。容量の大きなSTLデータ(ポリゴンの集合)に対して、なるべく元の形状を保ったままポリゴン数を減らす機能や、データの中で平坦であるべき部分を滑らかにして凹凸をなくすスムージング機能などを持つ。より自然な造形物を短時間に安定して得られるSTLデータの作成を狙ったとしている。

*8 STL工房を開発したのは日本ユニシス・エクセリューションズ(本社東京)で、理化学研究所の「産業界との融合的連携研究制度」を利用した。価格は機能(ポリゴン数削減、同細分化、スムージング)ごとに10万円(税別)。

図9●アンドールが出展したポリゴン編集ツール「STL工房」
図9●アンドールが出展したポリゴン編集ツール「STL工房」
形状を維持したまま、ポリゴンの数を最適化できる。
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 元の形状を維持したままのポリゴン数の削減は、隣接するポリゴン同士が形成する角度が大きいところを稜線とみなし、この稜線を変えないようにする一方で、稜線から遠いところのポリゴンを間引く機能。3Dスキャナーで立体物を測定すると、得られた3D点群データは稜線部分も平坦部分も同じ密度になり、ここからポリゴンを作ると平坦部分にも多くのポリゴンができることになる。このようなデータを直接3Dプリンターにかけても、3Dプリンターでのデータの処理に時間がかかってしまったり、造形が不安定になったりする。単純にポリゴンを減らすと稜線形状などを崩す恐れがあるが、STL工房では稜線付近のポリゴンは細かいままなので、稜線は動かない。

 スムージング機能でも、外形や稜線、小さな半径の角丸め形状を維持できるのを特徴とする。スムージングは一定範囲の点群を対象に平均化する処理であり、平坦面では効果的だが、稜線部分では角丸めの半径が大きくなるなどの副作用が出やすい。STL工房では外形と稜線は変えることなく、「面粗さ」(点群の凹凸)を10分の1程度にできる。

 ポリゴンを細かくする機能も設けた。ポリゴンが粗いデータは、造形してもごつごつした表面の起伏や稜線の乱れがモデルに現れてしまう。これを避けるため、ポリゴンを細かく分割する機能である*9

*9 このとき、ポリゴンを平らなものとして単純に分割しても形状の粗さは消えないため、ポリゴンに対して膨らみを与えてから分割する。