ななつ星のエンブレム

図3●「ななつ星in九州」のエンブレム
図3●「ななつ星in九州」のエンブレム
光造形システムで原型を造形し、砂型鋳造した。
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 SOLIZE Products(本社東京)が展示したのが、JR九州の「ななつ星in九州」の車両に取り付けられたエンブレムだ(図3)。3Dプリンターで原型を造形し、鋳造して完成させたものである。

 具体的なプロセスは次のようになる。まず、2Dのイラストデータや手書きの仕様書(立体化に関する指示)を基に、3Dデータを作成する。この3Dデータを米3D Systems社の光造形システム「iPro 8000」で出力した。実際にはいくつかに分割して造形し、それらを接着。造形物に対して表面仕上げとサーフェサー塗装を行って原型を完成させる。

 次に、樹脂製の原型の形状をアルミニウム(Al)合金製の原型に転写。このAl合金の原型を使って砂型を作製し、溶湯を流し込んで鋳造することで最終的な金属(真ちゅう)製のエンブレムが完成する。

 このように、原型を3Dプリンターで造形する方法はかなり広まってきている。木型を手作業で作製するよりも大幅に期間を短縮でき、曲面を含む複雑な形状でも3Dデータさえあれば忠実に再現できるからだ。完成品の材料として、一般的な砂型鋳造と同じ金属を使うことができる*4

*4 原型ではなく砂型を直接造形できる3Dプリンターもある。型抜きが難しい、より複雑な形状の砂型を造れる。

射出成形を実演

 ストラタシス・ジャパンのブースに小型の射出成形機を持ち込み、3Dプリンターで造った型(入れ子)による成形を実演したのがスワニー(本社長野県伊那市)である(図4)。実際の製品と同じ樹脂による成形を繰り返した。

図4●3Dプリンター製の型を取り付けた射出成形機
スワニーは小型の射出成形機を会場に持ち込み、3Dプリンターで造った型を装着。実製品と同じ樹脂での成形を実演した(a)。入れ子(緑色の部分)が、3Dプリンターで造形した樹脂製の型(b)。

 型に使用したのは、Stratasys社の「デジタルABS」と呼ぶ強度と耐熱性に優れた材料だ。複数の樹脂を造形時に混合することで実現しており、同社の「Objet Connex」シリーズで使える。

 ストラタシス・ジャパンは、この材料で型を作った場合の効果を、Al合金製の型との比較でパネル展示した。例えば、ポリアセタール(POM)製のファンローターの金型なら従来7日のリードタイムが1日に、ポリプロピレン(PP)製のスプーン(6本)の金型なら従来の30日が7日に短縮。いずれも費用は約1/2になるという。