ヘッド退避機構でトラブル防止

 ムトーエンジニアリング(本社東京)は、自社開発した卓上型の3Dプリンター「MF-2000」を出展した(図7)。2014年7月に発売した。同年1月に発売したパーソナル3Dプリンター「MF-1000」に続く「Value 3D MagiX」シリーズの第2弾となる*7

*7 樹脂の急激な温度変化による収縮と反りを抑えるための造形テーブルへのヒーターの内蔵、吐出した樹脂を冷却するためのプリントヘッド部へのファンの搭載は、MF-1000を踏襲している。MF-2000の価格は45万円(税別)。

図7●ムトーエンジニアリングの3Dプリンター「MF-2000」
図7●ムトーエンジニアリングの3Dプリンター「MF-2000」
材料を吐出するヘッドを2つ搭載する。特徴的なのは、使用中のヘッドと使用していないヘッドの高さを相対的に変化させる機構を持つこと。写真右では、右側のヘッド(使用中)が少しだけ下がっている。
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 造形方法はMF-1000と同じで、ヒーターを内蔵したヘッドから溶かした樹脂を吐出する手法を採用している。最大造形寸法は奥行き300×幅300×高さ300mmと、MF-1000の奥行き200×幅200×高さ170mmに比べて一回り大きい。「MF-1000のユーザーなどから寄せられた『もう少し大きなものを造形したい』との声に応えた」(同社)。最小積層厚さは100μ~500μmで100μmごとに5段階で調整できる。

 造形用の樹脂(フィラメント)は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)とポリ乳酸(PLA)の2種類。近く、水溶性のポリビニル・アルコール(PVA)も加える予定という。

 最大造形寸法の拡大に加えて、造形ヘッドを2つに増やしたのがMF-1000との大きな違いだ。2つのヘッドからそれぞれ別の樹脂を吐出することが可能で、色が異なる樹脂を使って2色の造形物を作製したり、片方からはABS樹脂を、もう片方からはPLAを吐出したりといった使い方ができる。

 MF-2000は造形ヘッドを2個搭載するが、造形に使っていないヘッドの位置を相対的に高くすることで、そのヘッドが造形物と干渉するのを防ぐ独特の機構を備える。具体的には、正面から見て右側のヘッドが上下に動き、左側のヘッドを使う際には高く、右側のヘッドを使うときには低くなるように位置決めされる。

ローランドDGが新規参入

 ローランド ディー.ジー.(ローランドDG)は、開発を進めているデスクトップ型の小型3Dプリンター「ARM-10」を参考出展した(図8)。2014年秋の発売を予定している。

図8●ローランド ディー.ジー.が参考出展した3Dプリンター
図8●ローランド ディー.ジー.が参考出展した3Dプリンター
下面からプロジェクターで光を当てる方式を採用した。右側の球体スピーカーの表面を覆う部品は、この3Dプリンターで造形したもの。
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 ARM-10は、光硬化性樹脂を使った光積層造形システムで、幅130×奥行き70×高さ70mmのワークを造形できる。プロジェクターからの光を下側から当てて、造形テーブルを引き上げながら積層していく手法を採用した。積層ピッチは100μmで、積層速度は10mm/hという。

 今回のDMS展では3Dプリンターに合わせて、小型切削加工機の新製品も出展した。複雑な形状が造れる3Dプリンターと加工精度の高い切削加工機とでそれぞれ異なる部品を造り、それを組み合わせて試作品を造るといった使い方を想定している。同社は、デジタル加工に関する専門知識がなくてもパソコンを活用してものづくりができる「デスクトップものづくり」を提唱しており、3Dプリンターはこの考えに基づいた製品となる。なお、ARM-10の価格については明言を避けた。