活用事例
3Dプリンターの活用は、試作から実製品の製造へと広がりを見せている。直接、部品を製造する手段として、原型や成形用の型を作る手段としての活用事例を紹介する。
セグウェイ用のカスタマイズ部品
丸紅情報システムズ(MSYS、本社東京)は、試験的に作製したカスタマイズパーツを実装した立ち乗り電動2輪車「セグウェイ」を出展した*1。展示したセグウェイには、ハンドルにスマートフォンを取り付けるためのアタッチメントの他、タブレット端末のための台座、自転車用ヘッドライトを設置するための部品、ホイールカバー、搭乗部下面のフットライトの設置用部品などのカスタマイズパーツが取り付けられていた(図1)*2。
*1 MSYSとセグウェイジャパン(本社横浜市)は2014年6月24日、3Dプリンターによる造形を前提としたセグウェイ用カスタマイズパーツを開発する共同プロジェクトを開始している。
*2 カスタマイズパーツは、MSYSが販売している3Dプリンター「FORTUS」シリーズ(Stratasys社)を使って作製した。
「3Dプリンターを活用すれば自由度の高いデザインのパーツを造れる。加えて、少数のユーザーニーズに応じた少量のカスタマイズパーツの作製にも迅速に対応できる」(MSYS製造ソリューション事業本部モデリングソリューション技術の丸岡浩幸氏)。MSYSとセグウェイジャパンは、今後1年をかけて用途に応じたカスタマイズパーツの開発や実証実験を共同で行い、実用化に向けた取り組みを進める。
形状も生産タイミングも自由度が高いのが3Dプリンターによる造形の大きな特徴の1つ。この点で、きめ細かいカスタマイズが可能なオプション品や、長期にわたって不定期に出荷する保守部品の製造手段として、3Dプリンターを活用する例は今後、かなり増えていきそうだ。
大規模造形サービス日本上陸へ
このような観点で、アルテックがストラタシス・ジャパン(本社東京)との合同ブースで展示したのが、Stratasys社RedEye事業部が3Dプリンターで造形した大型部品だ(図2)。樹脂製のフロントグリルやインスツルメントパネル、スキーの板などで、大きさは2~3mに及ぶ*3。
*3 3Dプリンターの造形寸法を超えるものは、分割して成形した上で、成形に用いたのと同じ樹脂で接着して一体物にする。
同事業部はStratasys社の3Dプリンターや最新技術を用いて実使用製品や治工具を製造するプロセス「DDM(Direct Digital Manufacturing)」によるサービスを提供している。顧客からデータをオンラインで送ってもらい、造形の計画を自動的にスケジューリングして顧客に近い拠点で造形し、造形物を送る仕組みだ。500台以上の3Dプリンターを世界数十カ所の拠点で稼働させているという。
造形対象は試作品に限らず、製品の生産に用いる治具や金型、少量生産の最終製品などもカバーする。3Dプリンターを利用することによる部品数の削減、壊れにくい造形方法といったコンサルティングも提供する。アルテックらは、このサービスの日本国内での提供を考えているという。